欧州ローカル列車の旅 > 2026年 > イギリス > プリマス~ガニスレイク (1)
| 目次 | (1) | プリマス~セント・ブドー Plymouth - St. Budeaux |
| セント・ブドー~ガニスレイク St. Budeaux - Gunnislake | ||
| (2) | ガニスレイク Gunnislake | |
| セント・ブドー St. Budeaux | ||
| ロイヤル・アルバート・ブリッジ Royal Albert Bridge |
もう12年も前だが、私はイングランド南西部を2014年の2月と6月に連続して訪れた。2月にコーンウォール(Cornwall)へ行こうと思って出かけたのだが、大雨による交通寸断で、プリマス(Plymouth)まで行ったものの、その先の列車は全て運休で乗れなかった。そこで、動いていたエクセター(Exeter)から出ている2本の盲腸線に乗った。その両線もなかなか良かったのだが、もしその時コーンウォールに行けていたら、未だに乗っていなかったかもしれない。
そして同年6月に再チャレンジして、コーンウォール内の4つのローカル盲腸線に乗った。結果、デヴォン(Devon)とコーンウォールの鉄道は、ほぼ乗り潰したのだが、一つだけ乗り残している。2月にも6月にも乗れなかった、テイマー・ヴァレー線(Tamer Valley Line)で、プリマスから北上し、ガニスレイク(Gunnislake)というコーンウォールの内陸の村まで、23キロほどの短い盲腸線である。

全線完乗を目指しているわけでなくても、ある一定の地域を大体乗り潰すと、乗り残した線のことが気になってくるものである。のみならず、このテイマー・ヴァレー線は、かなり魅力的なローカル線と思われる。乗り残したがゆえに、何かにつけて気になっていた。地図を開いてもついそちらに目が行ったりして、そうするとますます乗りたくなってくる。というわけで今回、さほど近くまで来たわけでもないのに、この線に乗るために、はるばるプリマスまでやってきた。
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| プリマス駅 | ガニスレイク行きは3番線から発車 |
6月の日曜日だから、既に夏休みで観光シーズンである。ブリストル(Bristol)から乗ったペンザンス(Penzance)行きは満員の盛況であったし、プリマスの駅もそこそこ賑わっていた。しかし、テイマー・ヴァレー線ガニスレイク行きが発車する行き止まりホームの3番線は、閑散としていた。既に2輌編成の気動車が入線しているが、ガラガラで、ホームもひっそりしていた。発車まで、新たな客もほとんど現れず、2輌編成に合計十数名だろうか、空席だらけで定刻1分遅れ、気動車独特のうなりをあげ、列車はゆっくり発車した。

テイマー・ヴァレー線は、プリマスからガニスレイクまで、約23キロ、途中駅7駅の路線だが、実際は最初の5キロほどは、ペンザンスへ向かうコーンウォール本線を走る。その区間はペンザンスまでの特急列車も走る幹線で、複線である。、しかし、本線の列車は、ロンドン~ペンザンスの特急のみならず、ローカル列車でも、この区間の途中駅はほとんどの列車が通過してしまう。本線は朝夕に申し訳程度に停車するだけで、昼間は2時間に1本の、このテイマー・ヴァレー線の列車だけが頼りなのである。
それでも線路自体は幹線だから、線路規格も高い筈なのに、わがガニスレイク行きは、一向にスピードを上げず、ローカル線らしく、時に木の枝をかすりながら、プリマスの街中をのろのろと進む。
最初の駅は、複線に相対ホームがある、殺風景な感じのデヴォンポート(Devonport)で、周辺は普通の住宅地である。ここでさっそく3名下車。ちょこっと走って次のドックヤード(Dockyard)も、同じような感じだが、駅自体は殺風景で、やや荒れた感じであった。ここは1名下車。2時間に1本のこのローカル線をプリマスの市内交通として使っている地元の人と思われた。ドックヤードという駅名から、港湾産業地帯にある駅を連想するが、駅の周囲は住宅地のようであった。
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| プリマス発車直後の車窓 | デヴォンポート駅 |
ドックヤードを出ると、右手に圧巻と言ってよい眺めが広がる。それは、同じような灰色の屋根の住宅が緩やかな丘にずらりと並んだ光景である。駅に遠くない所にこれだけ住んでいる人がいる。それを思えば2時間に1本のこの鉄道は、多くの住民に見放されていそうだし、逆に言えば、本数を増やせば需要はありそうだ。しかしおそらく、プリマスぐらいの都市なら、朝夕の渋滞もさほどではなく、バスや自家用車が定着しているのだろう。
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| ドックヤード駅 | ドックヤード駅の先の山側の住宅地 |
ドックヤードと次のキヤム(Keyham)も近くて、ちょこっと走るとすぐ着く。キヤムも似たような相対ホームの無人駅で、2人降り、中年夫婦が一組乗ってきた。
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| キヤムの先の海側は港湾の雰囲気 | 本線との分岐点で先に駅がちらりと見える |
キヤムから2分ぐらい走ると、ポイントをがたがたと渡り、複線の本線から分岐し、こちらは山側に入っていく。左カーヴをしている本線の先に、相対ホームの駅がちらりと見え、こちらは単線の寂しい駅、セント・ブドー・ヴィクトリア・ロード(St. Budeaux Victoria Road)に停まる。ここは乗降客がいなかった。実質ここからローカル線に入るので、運転上の手続きが必要なのか、運転士が降りてきて、ホームの信号施設などが入っていそうな箱を開け、何かやっている。
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| セント・ブドーでは運転士が信号操作か | テイマー川に架かる橋の下をくぐる |
このセント・ブドーのあたりの路線の入り組み方は、なかなか興味深いのだが、ここは帰りに降りてみたので、後述する。
セント・ブドー・ヴィクトリア・ロードを発車して2分、右カーヴで進路を北へ変え、列車はテイマー川に架かる鉄道と道路の2つの橋をくぐる。この橋はコーンウォール本線がテイマー川を渡りペンザンスを目指すロイヤル・アルバート・ブリッジ(Royal Albert Bridge)と、それに並行する道路橋である。渡った先にはソルタッシュ(Saltash)という駅がある。
残念ながら、線路際には木がかなり茂っていて、橋をじっくり眺められる所は少ない。車窓左手はテイマー川が沿っているのだが、その眺めもしばしば木々に隠される。しかも、本線をあんなにノロノロと走っていた列車も、セント・ブドーからは人が変わったように高速になり、ぐんぐんと進む。テイマー川の支流を2つ、鉄橋で渡る。このあたりのテイマー川は湖のように広い。進むにつれ、振り返るとロイヤル・アルバート・ブリッジが横から見えるようになる。
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| 少し進んで振り返った所からの川と橋の風景 | 2名下車したベア・フェレス駅 |
その後は川から離れ、農村風景の中に小さな集落が見えてくると、ベア・フェレス(Bere Ferrers)に着く。プリマス市内のやや殺伐とした感じの小駅と違い、綺麗に整備された駅である。地元の人と思われる2名が下車。駅舎の外にレトロなポスターが貼られているが、駅舎が小さな鉄道博物館になっているらしい。
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| ベア・フェレス駅舎 | テイマー川を見下ろす絶景が開ける |
ベラ・フェレスからは勾配を上がっているのが感じられるような丘陵地を北上。引き続きかなりのスピードでぐんぐんと進む。遠くテイマー川がはるか下の方を流れている絶景も見られる。そうしているうちにスピードを緩め、右へカーヴすると、左から線路が合流してくる。それが1本の線路になってしまうと、ベア・アルストン(Bere Alston)に着く。列車はここでスイッチバックをするのである。ここも小綺麗に整備された駅で、3名下車し、ここからの乗車客もいた。
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| 左から線路が合流してくる | ベア・アルストンに到着 |
ベア・アルストンは、もとは相対ホームの、駅らしい駅だったようだ。今は片面ホームだけで、もう一つのホームは残っているが、線路は剥がされている。何故こんな所でスイッチバックをするかというと、もともとはもっと複雑に路線が入り組んでいたからである。廃線になったこの先は、オクハンプトン(Okehampton)を経てエクセターへとつながっていた。歴史的にはエクセターとプリマスを結ぶ路線は、こちらが先で、現在のニュートン・アボット(Newton Abbot)経由が開通してあちらが本線になってからも、しばらくは共存していたが、1960年代のローカル線の大々的な整理の際、ここもその対象となり廃線になった。また、これから行くガニスレイクの先もさらに伸びていたが、それも廃止になり、今はプリマス~ベア・アルストンの元本線の一部と、ベア・アルストン~ガニスレイクの元支線の一部だけが残り、両方合わせてテイマー・ヴァレー線として何とか生き残っているのである。

スイッチバックのため、時刻表では2分停車となっている。車掌がホームから線路に降りて、手動でポイント操作をする。そういえばこの車掌、検札をしないどころか、車内を回ってきてもいないように思う。あまりに乗客が少ないからなのか、それとも車掌ではなく運転要員なのだろうか。
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| 幹線分岐駅だった時代の風格も感じる | 使われなくなった反対ホーム |
ベア・アルストンからは、また人が変わったようにスピードが落ちた。勾配のせいではなく、線路規格が悪くなったからだと思われる。その時は、この先はもう軌道整備に金をかけていないのか、と思ったのだが、後から、ベア・アルストンまでは旧本線だったことを知ると、そのせいかな、とも思えてくる。とはいえ、本線だったのももう半世紀以上も昔の話だ。それだけ年月が経てば、旧本線であっても、現本線並みに軌道整備が続いていなければ、線路規格が落ちていてもおかしくないが、ともかく、ベア・アルストンの手前と先では、別路線のようにスピードが変わる。
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| テイマー川橋梁から車窓右側 | テイマー川橋梁から車窓左側 |
丘陵地で時に農地があるのの、木々が多く、さほど展望が利かない景色が続いていたが、次のカルストック(Calstock)に近づくと、突然、線路が空中に躍り出たようになる。ここで列車はテイマー川の本流を高い橋梁で渡る。テイマー川沿いにカルストックの集落が見下ろせる絶景ポイントである。またこのテイマー川は、ここでもデヴォン州とコーンウォール州の境界である。集落は線路の左右両方ともコーンウォール側に広がり、デヴォン側は人家もほとんどない農村である。
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| カルストックで4名下車 | カルストック駅ホーム |
渡るとほどなく、高台にあるカルストックに着いた。4名下車。私の乗っていた車輌からは客がいなくなってしまった。降りた客はあの真下に見えた集落まで坂を下りていくのだろうか。下りる時はいいが、列車に乗る時は大変だろう。
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| 最終区間はほとんど乗客がいない | ガニスレイク手前の風景 |
最後の一駅は、木々の間をカーヴを繰り返しながらのろのろと進む。時に15マイルの速度制限標識もあった。展望もほとんど利かず、時に木々の間から農地や荒れ地が見える程度で、ゆっくりと最後の坂に挑んでいる感じは、味わい深い。日本でもその昔、キハ20などの旧型気動車を使った山へ向かう盲腸線の終着駅近くには、こんな所がよくあった。