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プリマス~ガニスレイク 目次


目次 (1) プリマス~セント・ブドー Plymouth - St. Budeaux
セント・ブドー~ガニスレイク St. Budeaux - Gunnislake
(2) ガニスレイク Gunnislake
セント・ブドー St. Budeaux
ロイヤル・アルバート・ブリッジ Royal Albert Bridge

ガニスレイク Gunnislake


 にわかに景色が開けたと思うと、気動車のうなりが止まり、サミットに到達か、と思ったら、もうそこが終着ガニスレイクであった。割と新しそうな片面ホームがあり、駅舎もない、そっけない終着駅であった。屋根のある場所は3人も座ればいっぱいのホームの小さな待合所だけである。そして駅自体、単線である。そうするとこの線は、セント・ブドーでコーンウォール本線から分岐した後は、列車の行き違いが全くできず、1編成しか入線できないことになる。この線は1時間に1本の運転もできないのだ。日本以上に徹底的に合理化している。

 この終着駅に降り立ったのは、私以外は2~3人だろうか。すぐに駅を出て消えてしまった。


 時刻表では、ガニスレイクの到着は14時06分で、14時11分発プリマス行きとなって折り返していくのだが、実際にはガニスレイクに着いたのが14時11分であった。すぐに運転士が出てきて、ホームで写真を撮る私にちょっと目くばせをすると、急ぐ風もなく、反対側の運転台に乗り込む。ほどなく発車。ガニスレイクからの客は2~3名だったようである。

 すぐ折り返して発車していった  線路1本に車止めがあるだけの構造

 とはいえ私もずっと、ここガニスレイクでは5分で折り返すか、1本やり過ごすか、迷っていた。1本やり過ごすと次は2時間後で、この何もなさそうなガニスレイクでの2時間待ちはきつそうだ、と、来る前からネットで調べて思っていたのである。だが、かといって定刻でも5分しかなく、駅だけを見て折り返すのも、ちょっと気が引けていた。今日は他に特に行きたい所も決めておらず、時間に余裕があるから、余計である。しかも今日は遅れのせいで、2分停車で折り返して出ていってしまった。

 というわけで、ホームにも駅前にも誰もいないガニスレイクに一人取り残されたのだが、この孤独感もまた旅の味わいのうちではある。ネットで調べていた時から、駅がガニスレイクの村の中心から離れており、ドレイクウォールズ(Drakewalls)という村との中間ぐらいにあること、駅周辺には店も飲食店もなさそうなことも、気づいていた。昼食がまだなので、2時間のうちには何としてでもどこかで何かを食べるつもりではいたが、駅周辺には見事に何もない。駅前の道路を車は時々通る。ガニスレイクの村と反対側にはガソリンスタンドが見えており、その先1キロぐらい行くと、グーグルマップによればだが、ドレイクウォールズの村に営業中のカフェが一つあるらしい。とりあえずそちらへ向かって歩いてみる。

 ガニスレイク駅入口  ガニスレイク駅前の道路標識

 そのガソリンスタンドまで行くと、有難いことに、結構大きなスタンドで、コンビニが併設されている。これはグーグルマップ検索での死角かもしれない。現実的には昔ながらの田舎の小売店より、こういったガソリンスタンドの方がよほど充実しているのだ。しかし、グーグルマップで「カフェ」などのキーワードで検索すると、ここはヒットしない。

 入っていくと、サンドイッチなどもしっかり売っているし、ホットコーヒーもある。今日はかなり暑いので、冷たい飲み物にしたが、とにかくそうして十分に充実したランチを買い、誰もいない駅に戻り、開放的な駅の待合所のベンチで昼食にした。

 駅から村へは緩やかな下り坂  古くからの家々が見えてきた

 腹を満たせば気力も戻ってくる。駅からはドレイクウォールズの方が少し近いのだが、せっかくガニスレイク駅にいるので、ここはやはり、ガニスレイクの村の中心へ行ってみようと思う。さほど遠いわけではなく、1キロぐらいだろうか。一応、片側に歩道もちゃんとある下り坂の寂しい国道を数分歩いていくと、前方に集落が見えてきた。

 村にはゲストハウスといわゆる雑貨屋(ニュースエージェント)、雑貨ギフトの店、パブなどが若干あったが、日曜の今日はギフトの店は閉まっている。時間が止まったような静かな村で、古い石造りの住宅が多い。それでも廃墟らしい建物はあまりなく、今も人がそこそこ生活しているのは感じられた。たまに人とも出会うし、よそ者の私が奇異に見られることもなかった。

 ガニスレイク中心部  特に何もないが長閑なガニスレイク

 村の中心に、古い電話ボックスとベンチ、彫像と説明版がある。木々に囲まれて日陰になっているので、そこでしばらく休憩する。その説明版によれば、ガニスレイクは18世紀末から19世紀にかけて、露天掘りの炭鉱として栄えたという。ここにある彫像は、ウィリアムという鉱山を管理して多くの鉱夫を雇った名物男らしい。

 また、ここからもう少し先へ行くとテイマー川を渡る橋がある。1961年にソルタッシュのテイマー橋が開通するまでは、ここがテイマー川を渡る最下流の道路橋だったそうだ。その頃はまだ自家用車の普及率は低かっただろうが、それでも道路交通の重要なポイントであったには違いない。そして、一般の人がテイマー川を越える交通機関として、当時は鉄道の重要度が今と比較にならないほど高かったのであろう。

 炭鉱としての歴史を残す広場  2時間後の列車がガニスレイクに到着

 時間が止まったような、夏の午後のけだるいひとときをのんびり過ごし、早めに駅へ戻る。駅にはここからベア・フェレスまで4駅の、各駅周辺名所・観光案内板がある。それを見ても、ガニスレイクは他の3駅に比べ、これといった見どころがないらしい。スペースを埋めるためか「かつてヨーロッパ最大級の炭鉱として栄えた」とあり、その説明が詳しく書かれている。

 さっき私がランチを食べた駅ホームの待合所ベンチには、若い男女が座って列車を待っていた。車が停まり、中年女性が降りてきてホームに入ってきた。私が乗った2時間後の列車がゆっくり到着し、数名降り、発車間際までにもう2~3名が加わる。夕方の人が動く時間となり、私が乗ってきた中途半端な14時台よりはいくらか客が増えてきた。

 ガニスレイクの駅が妙に新しく綺麗なのは、割と近年に移転したからで、以前はもう少しガニスレイクの村に近かったらしい。わざわざ標高の高いサミットに近い所に移転したらしいのだが、理由は良くわからない。ガニスレイクの村の中心に駅があったところで大した利用は期待できないので、ドレイクウォールズとの中間の、両方の村が徒歩圏内という場所を選んだのだろうか。加えて駐車スペースを作る余裕のある場所を選んだのかもしれない。とにかくこの駅自体は何もない所にある終着駅である。

セント・ブドー St. Budeaux


 ガニスレイク16時11分発プリマス行きの客となり、行きに見た絶景を再度堪能する。カルストックではウォーキング帰りといった雰囲気の中高年が数名乗ってくるなど、行きよりはお客が多い。とは言っても盛況とは程遠い。

 乗ってみてわかったのは、この線は、コーンウォール本線内の途中駅は産業地帯や住宅地で殺風景で、観光客などはまず乗降しない駅なのに対して、分かれてからの4駅は、いずれもある程度、田舎歩きなどの観光客も利用する駅だということである。特に途中3駅はその要素があるようで、ガニスレイクまで行く観光客は非常に少ない。私ももう一度来るチャンスがあれば、次回はカルストックで降りてあの村を歩いてみたいし、ベア・アルストンの旧本線だったスイッチバックも、ベア・フェレスの駅の鉄道博物館も、下車してゆっくり見てみたい。


 だがいずれも、一度降りてしまうと次は2時間後なので、今日はそれらはパスして、おとなしくプリマスへ戻る代わりに、セント・ブドー・ヴィクトリア・ロードで下車してみることにした。ここで降りたのは私ともう一人、軽装の、地元住人と思われる老人で、乗る人はいない。カルストックで乗ってきた観光客のご婦人が、私がこんな所で降りるのを奇異な目で見ていたのに気が付いた。観光客と言っても遠方からではなく、プリマスあたりに住んでいて、休日に近場でハイキング、といった人達なのだろう。海外どころか英国の全国区観光地としての知名度もなさそうである。

 乗ってきた列車がプリマス方面へ去る  ヴィクトリア・ロード駅の入口

 私がここを選んで降りたのは、すぐ近くに、コーンウォール本線の、セント・ブドー・フェリー・ロード(St. Budeaux Ferry Road)駅があるからで、もしそこに停まる列車がすぐあれば、次にそこから乗りたいと思っていた。しかし残念ながら、そちらの駅は夕方遅い時間まで、列車は全く停車しない。

 事前にそんな事を調べているうちに、もっと面白い事を発見した。それは、ここからテイマー川の橋を渡って、川向こうのソルタッシュまで、歩いてもそんなに遠くないということである。12年前は、乗り潰しの時間の合間を利用して、その橋をコーンウォール側から見るために、ソルタッシュで下車した。しかしその橋を歩いて渡れることは知らなかったし、あの時はそれを知っても、そうする時間的余裕もなく、元気も残っていなかった。

 グーグルマップでは、セント・ブドー・ヴィクトリア・ロード駅から、ソルタッシュ駅まで、徒歩だと2.1キロ29分と出てくる。乗ってきた列車のセント・ブドー・ヴィクトリア・ロード着が16時45分。ソルタッシュも停車列車はあまり多くない駅だが、それでも殆ど停まらないプリマス市内の駅よりは停まる。調べれば、ソルタッシュ17時28分発のプリマス行きがあるではないか。こういう無駄がなく、欲張りで楽しめるスケジュールが組めた時は、自己満足であっても嬉しく、元気も湧くし、これは実行するしかない、という気持ちになるものである。

 左:ヴィクトリア・ロード駅 右:フェリー・ロード駅  フェリー・ロード駅プリマス方面ホーム入口

 セント・ブドー・ヴィクトリア・ロードで降りて列車を見送った私は、駅から上の道路へと上がってみた。出た所はごく普通の二車線道路で、車はそんなに通らない。道路を渡った反対側に、セント・ブドー・フェリー・ロード駅の入口がある。この両駅、かなり近いだろうというのは想像できていたが、駅の入口が道路の真向かいとは思わなかった。これなら同一駅名にしてもいいのではないかと思う。

 フェリー・ロード駅ホームへも降りてみる。本線だから複線で、相対ホームの駅である。線路を跨ぐ道路から、それぞれのホームへの通路が別々にある。今日の往路、ガニスレイクに行く時にホームの端がちらりと見えた、その駅である。

 フェリー・ロード駅ペンザンス方面ホームに立つ  2つの駅の北側の交差点あたり

 停車列車が非常に少ない寂れた駅だが、一応きちんと整備はされており、一通りの案内表示も整っていて、特に荒れた感じもなかった。想像だが、このフェリー・ロードは朝夕のみ停車するので、この辺に住んでいる通勤通学客などの利用が多少あり、昼間にたまにお出かけする時は、ヴィクトリア・ロードの方を使う、という使い分けをしているのかもしれない。

ロイヤル・アルバート・ブリッジ Royal Albert Bridge


 2つの駅の観察を終えたので、両線の線路を跨ぐ道路を北へと歩く。すぐ交差点がある。そのあたりは交通量も多く、バス停があり、その先には住宅地が広がっていた。これだけ住んでいる人がいるし、鉄道ならプリマスまで10分である。バスよりは速いだろう。鉄道の本数が多ければバスより便利そうな気もするが、プリマスも市街地と駅が少し離れているから、ここはやはりバスにお任せというのが実態なのだろうか。鉄道の本数を増やせば利用者が増えるポテンシャルはありそうに思える。

 橋へ向かって住宅街の緩やかな坂を上がる  橋の入口に着いた

 その交差点を左へ曲がる。そこからは住宅地を緩やかに坂を上がっていく道路で、主要道路ではないのか、交通量は少ない。日差しの強い暑い午後で、歩行者もほとんどいない。両側が民家で、時たま庭仕事などの人を見かける程度である。

 左が鉄道橋で右が道路橋  ロイヤル・アルバート橋のデヴォン側

 そんな坂道を歩くこと10分、テイマー川にかかる橋が見えてきて、それらしき場所に来た。この、テイマー川を歩いて渡れることについても、ネットで検索すると色々な情報があり、来る前の私は少しばかり困惑していた。というのは、ロイヤル・アルバート・ブリッジは歩行者も歩いて渡れる、と書いてあるものが一つならず見られるのだが、これは間違いである。ロイヤル・アルバート・ブリッジは、単線の鉄道橋の名前で、歩道は併設されていない。歩けるのはその北側の道路橋で、道路橋の方は、テイマー・ブリッジという名前なのである。そのテイマー・ブリッジは、有料道路で料金所があるが、南側に歩行者と自転車用の通路があり、歩行者は無料で渡れる。結局、誤情報は、2つの橋の名前を混同しているわけで、どの情報も、鉄道橋が歩けるとは書いていない。


 道路橋の方が鉄道橋より若干高い所に架かっているため、この歩道からは鉄道橋を半分見下ろすように眺めることができる。角度を選べばいい鉄道写真も撮れる素晴らしい場所で、今度は時間を取ってゆっくり来たいと思ったが、今日は予定通り、ソルタッシュから列車でプリマスへ戻らなければならない。宿泊先はプリマスで乗り換えてからまた遠いからである。

 テイマー橋歩道からの南の眺め  渡り終えるとソルタッシュ駅が見えてくる

 それでも歩いて渡っている間に列車が一度通り、その写真も撮れたし、橋からの素晴らしい眺めに大満足であった。12年前にソルタッシュの川辺で眺めた、英国国旗のパブも健在であった。

 渡り終えた所で振り返るとこんな感じ  ソルタッシュ駅入口に「2つの橋」という名のパブ

 そうして12年前に来たソルタッシュ駅へ、難なく余裕をもってたどりつくことができた。いつもながら、もう12年も経ってしまったかとの感慨を覚えながら、ソルタッシュのホームに立つ。

 長閑な夏の夕方の陽が差すソルタッシュ駅は、平和そのもののたたずまいである。プリマス方面行きホームには、列車を待っている人が4名いて、反対ホームのベンチにも2名、座っていた。いずれも観光客などではなく地元の人に見えた。

 ソルタッシュ駅舎  12分遅れで到着したプリマス行き列車

 12年前は、駅舎内に発車案内の電光掲示板があり、列車の遅れなども出ていたのを見たのは間違いないが、それはなくなっていた。その代わり、12年前はまだ活用していなかったスマートフォンを通じて列車の遅れが簡単にわかる時代になった。

 延々、ペンザンスからやってくる列車なので、やはり定刻には来なくて、12分遅れてきた。プリマス止まりで、ほぼ各駅停車ではあるが、グレート・ウェスタンのファーストクラスも付いた、日立製特急用の5輌編成であった。ほぼ各駅停車ではあるが、ソルタッシュからプリマスの間はノンストップである。駅の先から単線となって、今眺めてきたロイヤル・アルバート・ブリッジを渡り、また複線になると、さっきホームに立ったセント・ブドー・フェリー・ロードを通過。その先でテイマー・ヴァレー線が合流し、行きにちょこちょこと停まってきた3つのプリマス市内駅を通過し、あっけなくプリマスに到着した。

 12年前に乗ったデヴォンとコーンウォールの盲腸線群と全て合わせて、私なりのベスト3を挙げるならば、今日乗ったこの線を1位にしていいぐらい、素晴らしいローカル線であった。リスカード~ルーの線にもスイッチバックがあり、加えてあちらはそこが乗降客が殆どいない謎の駅なので、その方面に興味があれば、あちらも面白い。あちらが2位で、3位は海の眺めが素晴らしいセント・アイヴスといったところであろうか。いずれにしても、今日の線は、風景が雄大かつ変化に富んでいて、車窓の見どころも多かった。難点は終着駅での時間の潰し方で、それを含めればルーやセント・アイヴスに軍配があがる。もし乗り潰しにこだわらないなら、ガニスレイクまで行かず、カルストックまで乗り、あの村を散策することで、この沿線の魅力の9割以上は味わえそうに思う。



欧州ローカル列車の旅:プリマス~ガニスレイク *完* 訪問日:2026年6月14日(日)


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