欧州ローカル列車の旅 > 2026年 > デンマーク > ホプロ~スケイン
| 目次 | デンマーク最北の鉄道 Northernmost Railway in Denmark |
| ホプロ~オールボー Hobro - Aalborg | |
| オールボー~フレデリクスハウン Aalborg - Frederikshavn | |
| フレデリクスハウン~スケイン Frederikshavn - Skagen | |
| スケイン Skagen |
北欧とは、一般的には5ヶ国を指す。うちアイスランドは鉄道がないので除くと、北極圏を含むスカンジナヴィア半島を3つに縦割りしたような、割と大きな3つの国がある。本サイトでもそれらの国の鉄道を順次取り上げた。残っているのが、その南にある小さな国、デンマークである。今回はデンマークのローカル線に乗ることにした。

デンマークは、グリーンランドを含めずにざっくり言うと、九州ほどの面積に、九州の半分ぐらいの人が住んでいる小国である。コペンハーゲン(København)のように著名な人気都市もあるが、全般的に言えば地味な国だと思う。とりわけ、国の面積の半分強を占めるユトランド半島(Jylland)は、ドイツを北へ延長したようなエリアで、ヨーロッパをある程度訪れている人でも、行き残している人が多いのではないだろうか。中にはコペンハーゲンとドイツを結ぶ長距離列車で通過しただけで、降りたことがない人もいるだろう。
一応、ユトランド半島の最北端がデンマークの最北端と言えるが、そこまで北上しても、他の北欧4ヶ国の首都より遥かに南である。ヨーロッパの他国で言うと、エストニアのタリンがここより北になる。イギリスでは、スコットランドのハイランド中部の緯度になる。つまりデンマーク最北端よりはスコットランド最北端の方が北である。
といった程度なので、デンマークの最北端をわざわざ目指そうという人は多くないと思うが、今回、路線図や時刻表を色々調べた結果、最北の町スケイン(Skagen)への路線を選ぶことにした。行ったことがない方面だからというのも理由だが、決定的なローカル線が見つからなかったからでもある。
デンマークの鉄道は、ドイツやベネルクスと似ていて、どの路線も、1時間に1本は運行されていて、一日数本、みたいなローカル線が見つからない。列車ダイヤを見る限り、全国に渡り都市型の等時隔運転が実現している国である。
ユトランド半島は、現在のデンマークの行政区分では、大きく南、中央、北の3地域に分かれる。ドイツのハンブルクから国境を越えてデンマーク最北部まで、概ね南北を貫通する鉄道路線が通っている。南から北ヘ、路線沿いに人口5万以上の主要都市を挙げると、コリング(Kolding)、ヴァイレ(Veije)(以上南ユトランド)、ホーセンス(Horsens)、オーフス(Aarhus)、ラナース(Randers)(以上中央ユトランド)、オールボー(Aalborg)(北ユトランド)の6都市がある。
本日乗車予定の最北の線は、当然、北ユトランドにあり、列車はオールボーから乗り換え無しである。オールボーは北ユトランドの中心都市であり、デンマーク全体でも第4位の主要都市である。よって最初は自然に、オールボーから最北のスケインまでの乗車を考えた。
しかし時刻表を見ると、ほとんどの列車は、オールボーの南50キロほどのホプロ(Hobro)という所が始発・終着になっている。そこで今回は、オーフスからオールボー行きIC列車に乗り、ホプロで降り、ホプロからスケインまで、つまり列車の始発駅から終着駅までの全区間を乗り通すことにした。距離172キロ、所要時間2時間46分だから、今の日本ならもう立派な長距離鈍行である。
日曜の朝、オーフス発オールボー行き3輌編成のインターシティーは、パラパラとはお客がいたが、空いていた。速度は結構早く、単調な風景の中を順調に北上し、定刻にホプロに着いた。予想より閑散とした所である。乗降客も少ない。
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| 風格あるホプロ駅舎 | ホプロ駅前 |
下車した一人の女性がホームにある電光掲示板を立ち止まって眺めている。ここを普段利用していない人で、私と同じ普通列車に乗り換えるのだろう。

ホプロ駅は、日本でも古い汽車駅の標準である2面3線で、片面ホームの1番線側に駅舎があり、2~3番線が島式ホーム、という構造である。IC特急は3番線に着き、ホプロ始発の普通列車は1番線から発車するので、地下道へ向かう。
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| ホプロ駅舎内はほぼがらんどう | ホプロ発車時はガラガラの列車 |
少し時間があるので駅前へ出てみる。特に何もない所で、駅前から緩やかな下り坂の道の先に家並みが見える。基本は住宅地のようである。駅舎は大きく立派だが、かつて切符売場その他の設備があったと思われる駅舎内ばがらんどうであった。いずこも同じ、時代の流れである。
その1番ホームには、ブルーを主体とした近代的な2輌編成1ユニットのディーゼルカーが停まっていた。ネットで調べてもあまり情報は出てこないが、ここには2004年から投入されている、シーメンズ社製の車輌らしい。今回のルートでは、オールボーの少し先から非電化区間になる。
ホプロからオールボーまでは、6駅49キロあり、そこを37分で走るから、ローカル列車としてはそこそこ快速である。ホプロまでがオールボー都市圏、というほどでもなさそうだが、IC特急はこの間、無停車で23分と、高速運転をしている。
列車はガラガラのまま、定刻に静かに発車した。最初の一駅間は特に長く、間はずっと原野や牧草地で、人家もあまりなかった。
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| 最初の停車駅アーダン |
最初の駅アーダン(Arden)で、10人以上乗ってきた。ホプロからの客より多いかもしれない。もっともこの辺から乗る人のほとんどは、オールボーへ行く人だろう。ホプロからオールボーなら、前のIC特急もあるので、ホプロから普通列車に乗る客は少ないのだろう。それでもアーダンは駅前を見る限り、ホプロより都会的で賑わっている感じもする。
アーダンの先は森林が多い。次のスカルピン(Skørping)では下車客もあり、その次のシュトゥルヴリン(Støvring)まで来ると、都会的な駅前になる。ビルやアパートも見られるようになり、都市郊外住宅地駅の雰囲気がある。
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| 都市郊外らしくなったシュトゥルヴリン | やや閑散としたシュヴェンストラプ |
駅間は平凡な農村や森林、駅付近はある程度の住宅地、という景色を見ながら北上。主要駅オールボーが近づくと、線路が広がり、周囲もビルなどが現れる。それでも大都市に近づいた時とは違う長閑さもある。
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| オールボーが近づき線路が広がる | 乗車が多い主要駅オールボー |
オールボーには時刻表より2分早着した。ここで少ない乗客のほぼ全員が下車した。代わって乗ってくる人がずっと多い。停車時間が10分もあるので、ガラガラならホームに降りて写真でも撮りたかったが、窓側の景色が見やすい席を確保しているので、そのまま留まる。停車中も次から次へと客が乗ってきて、発車時には席の8割以上が埋まった。
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| オールボー駅(後刻撮影) | オールボー駅(後刻撮影) |
オールボーは、デンマーク第4の都市で、都市人口は12万、広域都市圏全体では22万ほどの、地域の中核都市である。デンマークのユトランド半島ではオーフスに次ぐ2番目の都市である。大学もあり、文化施設なども充実しているものの、街自体に著名な観光地はあまりない。人口も長年、横ばいである。成熟した地味な街ではないかと思う。
オールボーを定刻に発車、広い構内を線路をかき分けながら、複線に落ち着くと、間もなく高架で相対ホームの都市型の駅、オールボー・ヴェストビュ(Aalborg Vestby)に着く。オールボー西駅である。ここでも少し乗ってきた。駅からの眺めは、中層のオフィスビルやアパート、工場など、都市内で繁華街からちょっと外れたあたりに良くある風景であった。新しい建物は少なく、成熟したエリアであることがうかがえる。道路には車が行きかっているが、交通量は少なく、歩行者もあまり見えない。
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| 街中の高架駅であるオールボー西駅 | フィヨルドの橋からの眺め(西側) |
ヴェストビュ駅を出ると間もなく線路は単線になり、長い橋で、フィヨルドを渡る。川にも運河にも、狭い海峡にも見えるが、フィヨルドである。一般的に、これから行く最北端までがユトランド半島と思っている人が多いと思うが、厳密にはここまでがドイツなどとつながる半島で、この先は北ユトランド島という島である。といっても大半の場所で狭い川ぐらいの幅しかなく、多くの橋でつながっているため、島という実感は薄い。この橋は全長403メートルで、単線の鉄道に並んで歩行者・自転車用の通路が設けられている。この区間の鉄道は1871年に開通したが、当初ここはフェリー連絡で、橋でつながったのは8年後の1879年ということである。その後、1938年に架け替えられ、2017年に、歩行者・自転車用の橋が併設され、今日に至る。下を船が通るため、跳ね橋で、毎日10回以上開閉して船舶を通すらしい。
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| フィヨルドの橋からの眺め(東側) | フィヨルドの橋からの眺め(北東岸) |
フィヨルドの北岸は、新開発地のようで、南岸とは異なり新しいアパートなどが目立つが、空地も多い。そんな景色をゆっくり眺める間もなく、次の駅、リンホルム(Lindholm)に着く。ここは乗降客は少ない。
リンホルムを出ると間もなく左へ単線電化の新しい線路が分岐していく。2020年に開通したばかりの線で、リンホルムとオールボー空港駅の間、2.8キロの短い線である。他方のこちらはここから非電化となる。もともとオールボー以北は非電化だったが、オールボー以南からの電車が空港まで直通できるように、空港線開通と同時にオールボー~リンホルムの短い区間が電化された。宮崎空港線とケースが似ている。
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| リンホルムの先で新しい空港線が分岐していく | 長い駅間の途中は風力発電機が目立つぐらい |
空港線を分岐した後は、住宅も途切れ、平凡な路線に戻り、駅間距離も長くなり、平坦な農村地帯を淡々と走る。時折風力発電機が並んでいる。そんなところを24キロもひた走り、ブロナスレウ(Brønderslev)に停まる。駅付近はなかなか開けており、中層アパートも一戸建ての新しい住宅も見える。20名以上が下車し、少し空いた。その次のヴロー(Vrå)は古くからの駅前集落で、新しいアパートなどは見られない。ここは下車客は少なかった。
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| イャーリングは下車客が多い | ビルも見えるイャーリングの東方向 |
また家並みが増えてきて、左側に小さな車輌を留置する車庫が見え、その向こうに単線の小さな駅がちらりと見える。その線路が寄り添ってくると、イャーリング(Hjørring)に着く。発音の難しい地名の一つで、イェリングともヨアリングとも聞こえるし、最後のグは実際はほとんど聞こえないので、入れない方が正解のようでもある。分岐路線がある主要駅で、駅舎は立派で構内も広い。町もそこそこ大きいようで、かなりの客が降りる。空いてきたし、停車時間が8分あるので、ちょっとホームに降りてみた。

イャーリングから出ている支線は、港町ヒエツヘルツ(Hirtshals)まで18キロを北上する線で、途中8駅があり、片道22分という、駅間距離の短いローカル支線である。イャーリング市内にもちょこちょこ駅があり、最初の駅はさきほどちょこっと見えた。この線は、平日日中はオールボーの南、今通ってきたスカルピンから直通列車が1時間に1本あるので、スカルピン~オールボー~イャーリング間は、スケイン行きと合わせて30分に1本の等時隔ダイヤが実現している。しかし土日はイャーリング~ヒエルヘルツの折り返し運転で、ホプロ~スケインの列車と連絡しており、どちらも1時間に1本の運転である。こちらが12時56分着、13時04分発と8分停車している間に、ヒエルヘルツ行きが13時01分発と、先に発車していく。車輌は同じ2輌編成の気動車で統一されているが、乗り換えた人は少なそうで、こちらより空いていそうである。
イャーリングを定刻に発車。こちらも次の1駅は短くて、1分ちょっと走るとすぐ、イャーリング・オスト(Hjørring Øst)に着く。イャーリング東駅である。駅前が大きなスーパーマーケットで、広大な駐車場がある。乗降とも若干。
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| 駅前がスーパーのイャーリング東駅 | 住宅が多いシンダル駅 |
東駅を出て1分、町を抜け、平凡な農村地帯の風景に戻り、列車は直線を快走する。それなりの集落で駅前が住宅地のシンダル(Sindal)、駅前に豪邸が並ぶ小さな村、トルネ(Tolne)と、少しずつ客を降ろしていく。クヴィッセル(Kvissel)で列車行き違い。両列車がほぼ同時着、短時間停車で発車していく。豊かで長閑な田舎生活が浮かぶようなエリアではあるが、目を見張るような景色はない。列車は淡々と東へ快走する。
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| クヴィッセルで反対列車と行き違う | フレデリクスハウン手前のスケインへの線路 |
やや建物が増えてきて、左から線路が寄り添ってくると、フレデリクスハウン(Frederikshavn)、意味はフレデリクの港である。デンマーク語の発音ではフレゼリクスの方が近いようである。分岐路線はないが、海に向けてどん詰まりの港町の駅であり、終着駅風である。実際、かつてはコペンハーゲンからここまで、直通の夜行列車があった。この列車もここでまた方向が変わるので、実際は2つの路線が同じ方向を向いた終着駅のようなものである。ここを境に輸送需要も線区の性格も変わるが、今はこうしてローカル列車がスイッチバックをして直通運転をしている。大半の客が下車し、少数が乗ってきた。

そういう駅であり、駅構内は広いし、最後は行き止まりの車止めである。しかし、列車は長いホームの真ん中にポツンと停車していて、駅舎までがちょっと遠い。今はオールボー以北は短編成のローカル列車しか来なくなったが、かつてはコペンハーゲン直通の長編成の列車が停車したのであろう。長いホームはその名残りと思われる。
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| 長いホームの進行方向 | ホームの駅出口寄り |
混んではいないが、それなりに客がいるし、これから乗ってくる人もいそうなので、12分も停まるが、駅を出るのはやめにした。いい席に座ったままにしたかったからでもある。そのホームからの印象は、ちょうど曇ってきたこともあり、やや殺風景で、港湾都市らしくクレーンが見えたりもする。駅前まで行ってもそんな印象かもしれない。それなりに見どころもある町らしいが、降りるならちゃんと町を歩かないと、良さはわからない。
間延びした12分の停車を終えて、来た方向へ戻るように発車。発車時点での乗車率は4割弱であろうか、つまり混んではいないが、空きボックスはなく、そこそこは乗っている印象である。日曜の昼下がりだから、用事なのか観光なのか、良くわからないものの、カジュアルな服装の中年の客が多い。
それでもフレデリクスハウン以北は、最果ての期待が持てる区間である。興味深いことに、ここもまた、最終のローカル区間は、それまでの区間よりも駅間距離がかなり短くなる。主要都市間は駅数を絞り、都市間の高速輸送を優先させ、大きな都市がない末端区間は、小まめに駅を設けてローカルサービスを提供、というわけだろう。この区間はリクエスト・ストップが導入されている。よってこれまでの区間よりスピードは落ちるが、それでもこの区間で表定速度63キロを維持している。標準軌だし、平坦な地形で直線が多いからできるのだろう。今回の全区間は、停車時間の長い途中の主要3駅を境に、割と綺麗に4区間に分けられるので、区間別に駅間距離やスピードのデータをまとめてみた。

町を抜け出し、両側は林が多い景色の中を進めば、最初の駅は、ストランビュ(Strandby)。古そうだが立派な駅舎が印象的で、一人だけ降りた。デンマーク語がわからなくても、ビーチが近いのではという駅名に思えるし、地図で見ると実際、小さな港もビーチもある海辺の町である。しかし列車から海は見えなかった。
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| ストランビュ駅 | イェルプで自転車で降りた客 |
森の中の小駅リメン(Rimmen)は通過。通常、リクエスト・ストップの駅は、乗る客がいるかもしれないので徐行するものだが、よほど見通しがいいのだろうか、結構な高速で一瞬のうちに過ぎ去ってしまった。
次のイェルプ(Jerup)は交換駅で停車する。下車客が数名いる。列車の少し前寄りに踏切があり、単線の向こうから行き違い列車がやってくるのが見えるので、降りた客は踏切を渡らずに待っている。ところが反対列車は動いているのか停まっているのか、なかなか近づかない。「渡っちゃっていいんじゃない?」という感じで見知らぬ客同士が顔を見合わせて、一緒に渡ってしまう。結局ゆっくりとやってきたが、そのおかげでこちらの出発が3分遅れた。ホプロを出て以来、遅れたのは初めてかもしれない。
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| なかなか近づいてこなかった反対列車 | 大きな駅舎のオールベク駅 |
リクエスト・ストップの小駅をまたもや高速で通過し、少し大きなオールベク(Ålbæk)に着く。乗降とも数名。ここもストランビュに少し似た古くて大きな駅舎があり、ホームに向けて駅名が掲げてあるが、駅舎としては使ってなさそうで、間に柵がある。
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| リクエスト・ストップのブンケン駅 | 線路際にはこういう林が多い |
ところで、フレデリクスハウンからスケインまでの最終区間は、地図で見るとほぼ東海岸に沿って走るし、平坦で山などないので、海が見えるのではと思っていたが、全く見えない。確かに詳しい地図を見ると、線路は波打ち際に近い所までは近づかない。そして線路と海の距離は近くても、防風林か防砂林だろうか、木々が茂っていたり、そうではない所も、高波よけの人工物なのか、自然の堆積なのかはわからないが、低い丘になっている。列車が二階建てなら、二階席ならかろうじて海が見えるのでは、という所はいくつもあるが、ずっと見えそうで見えない線であった。
フルシ(Hulsig)で、乗ってくる人が結構いた。雰囲気からすると、自炊型ホリデーホームに泊まっていて、スケインの町まで飲食か観光か買い物にでも出掛ける、といった人たちかもしれない。
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| 構内が少し広いフルシ駅 | 荒涼たる風景が続くが海は見えない |
フルシから次の駅まではちょうど10キロで、この最終区間では駅間距離が一番長い。岬の先端に向けて半島がかなり細っていくエリアだが、その間は砂丘で、ほぼ無人地帯なのだそうだ。
その10キロ先にある次の駅は、フレデリクスハウンツヴァイ(Frederikshavnsvej)という長い名前である。これは、デンマーク語で、フレデリクスハウンの後ろに「通り」が付いた駅名で、スケインの町の外れにある、フレデリクスハウン街道、といった意味である。こういった、主要都市へ向かう道路名が地名や駅名になっている所は、世界中どこでもある。東京の青梅街道駅が青梅市になく、甲州街道駅が甲州にないのと同じである。しかし、フレデリクスハウン自体が長い名前だけに、勘違いする人がいるのでは、と考えてしまう。そのフレデリクスハウンツヴァイ駅は、終点スケインの手前1キロの、スケインの西の町はずれの駅で、1992年にできた新駅だそうだ。駅のすぐ手前に大きな踏切がある。この道がフレデリクスハウンへの主要街道で、スケインではそういう道路名で呼ばれているので、それを駅名にしたらしい。駅自体は閑散とした所だが、数名が下車した。
この駅はまた、デンマークで最北にある鉄道駅である。私も来るまではてっきり、スケインが最北駅だと思っていたのだが、線路の最北端は、こことスケインの間であり、最後はごくわずかに南へカーヴして終点スケインへと到達するのである。来る前に調べていた時も、スケイン駅が最北の駅だと何かで読んだ。こちらが新しい駅、といってももう30年以上経っているけれど、アップデートされていない情報なのか、単線で無人の停留所だから無視されているのか、細かいことは気にしておらず、最北の町にある駅だからスケインこそ最北駅と単純にうたっているのか、といったところだが、とにかくフレデリクスハウンツヴァイ駅がデンマーク最北の駅であることは、詳しい地図で見れば間違いない。廃止された東根室が日本最東端の駅だったのと似ている。
終着スケインには14時26分、時刻表より4分遅れで到着した。そこそこの人がホームへ掃き出され、同数ぐらいの人が折り返しの列車に乗り込む。最果ての寂しい終着駅のイメージではなく、明るく活気のある雰囲気であった。
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| 終着スケインに到着 | スケインで折り返し発車前の列車 |
折り返しのスケイン発は毎時32分なので、私はスケインの町を1時間ほど歩き、15時32分発で戻る予定でいた。スケインにどれぐらい見どころがあるか、気に入ってもっと長くいたくなるか、わからないが、一般的には1時間が手頃であろう。しかし、一つ手前のフレデリクスハウンツヴァイが、デンマーク最北駅であること、スケインから歩いても20分程度であることを知ってしまったので、私はフレデリクスハウンツヴァイまで歩いて、帰りはそこから乗ろう、と、さきほどから考えていた。
しかし、ここスケインで乗り込む人が結構多い。観光帰りの人が多いようなので、1時間後はもっと混むかもしれない。であれば始発スケインから乗って好きな席に座りたい。そこで咄嗟に思いついた。今すぐ折り返す14時32分発に乗って、フレデリクスハウンツヴァイまで行き、そこから歩いてスケインに戻ってこよう。
というわけで、14時32分発に1駅3分だけ乗り、フレデリクスハウンツヴァイで降りる。流石に降りるのは私一人であったが、ここから乗る人は何人かいた。
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| フレデリクスハウンツヴァイ駅で降りる | フレデリクスハウンツヴァイを発車する列車 |
進行方向に大きな踏切がある。これがフレデリクスハウンへ向かう主要街道なので、こういう駅名になった、その道路の踏切である。そこまで行き、発車する列車を撮影。踏切より先は荒涼とした寂しい所で、人家も何もない。そこへ向けて走り去るローカル列車は、それはそれで一枚の絵である。

線路の最北端は、この駅より数百メートルほどスケイン寄りの、2つ目の踏切のあたりだが、そんな所まで行っても仕方ないので、最北駅とその隣の踏切、その辺の雰囲気を味わって、ざっと写真を撮る。それから結構強い日差しの中、「フレデリクスハウン街道」をスケインの方へ歩いて戻る。車はそこそこ通り、たまに自転車も通るが、歩行者はほとんど見ない。建物はパラパラとあり、ホテルもあった。
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| フレデリクスハウンツヴァイ駅全景 | 駅の横にあるフレデリクスハウン街道の踏切 |
こういった行動も、スマートフォンとグーグル・マップのおかげで、現地で突然思いついても楽にできるようになった。昔だったら、事前に調べて計画して、地図をプリントして持ってこないと、限られた時間の中でこんなことはできなかった。
グーグルマップに従い、途中から脇道に入る。落ち着いた閑静な住宅地の中を数分歩くと、小さな広場がある。広場の先から、スケイン駅付近まで通じている道が始まる。
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| 閑散とした街道の歩道を町へ向けて歩く | 途中から横道に入り、住宅街を歩く |
その道に入った途端、雰囲気が一変した。人が多く、両側に店があり、観光地風情である。露店も出ている。天気もいいので、アイスクリームなどが売れているようである。列車内でも最初に駅に降りた時にも、そこまで観光地の雰囲気は感じなかったが、やはり最北の町。マイナーなりに、しっかりと観光地なのであった。とりわけ今日は晴天で、夏の観光シーズンのピークの日曜である。この賑わいも今だけなのかもしれない。冬の平日などに来たらどんな様子だろうか。
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| 突如として賑やかな通りに出た | 駅付近の使われなくなった線路と踏切 |
時間には余裕が持てたので、店に入ってサンドイッチとコーヒーのランチを取る時間も取れた。まあ、慌ただしい旅と言えばそうで、もう1時間ぐらいゆっくりすればいいのに、と自分でも思うが、スケインの駅と付近の賑わい、最北駅、その間の普通の住宅街、色々なものを一通り、凝縮して見て体験できたので、自分なりには満足できた。乗ってきた1時間後の列車の到着に合わせて駅へ向かう。
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| 駅舎と駅前広場という雰囲気のスケイン駅前 | ホーム側に回ると駅と書いてあった |
グーグルマップを見ながら駅へ向かうと、明らかに駅舎と駅前広場、といった所に出たが、駅舎の壁は駅とは書いておらず、飲食店になっていた。反対側に回ってみると、そちらには、スケイン・ステーションと書いてあるが、切符の自動販売機は外にあるし、駅としての屋内の設備はもう無いのであった。

自分が乗ってきた1時間後の列車は、ほぼ定刻にやってきた。乗客数は乗降とも、1時間前と同じぐらいで、席には余裕があった。それでも景色を見やすい窓側の好きな席に座るなら、やはり始発からである。咄嗟の判断だったが、正解であった。
デンマーク最北への旅は、夏の晴天の日曜だったため、明るい旅であった。しかし、逆に言えば、ピークシーズンの日曜にしてこの程度だとも言える。来ている人も、外国人観光客より、デンマークの近郊の人が多いように見受けられる。冬の悪天候時の最北への旅は、きっと寂しいだろう。そんな時期の列車やスケインの町並みの様子は、どんなだろうか。そういう時期の方が心にジンと来る感傷旅行ができそうで、印象に残る旅になるかもしれない。そんな無い物ねだりのわがままな感想が出てしまったが、もちろんこの日の鉄道旅行は、快適で楽しいものであった。