欧州ローカル列車の旅 > 2026年 > スウェーデン・ノルウェー > オンゲ~トロンハイム (2)
ドゥヴェドは、ストックホルムからの定期直通列車は最遠でもここまでという駅である。広域的にはオーレ・コミューンという自治体に属する集落であり、同コミューンは、この線で言うとジャルペンからドゥヴェドまでで、その中心地がオーレといった位置づけである。ドゥヴェドは集落としてはオーレよりずっと小さく、駅周辺は山間の小集落の風情である。だが右手の山を見ればやはりスキー場になっているのがわかる。
駅自体はオーレよりも大きく、長距離客車列車の折り返し駅として運転上は重要な駅である。ここも下車客が結構あった。大きな荷物の旅行者はおらず、エステルムンドに用事で出かけた地元客が多いような気もするが、もとより想像である。
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| 構内の広いドゥヴェド | ドゥヴェドの駅裏は閑散としている |
そんな運転上の主要駅だが、特に停車時間が長いわけではなく、1分ぐらいの停車で発車。いよいよ特急が入線せず、一日2往復のローカル列車だけの区間に入った。ドゥヴェドからストゥーリェンまでは途中2駅があり、48キロを33分で走破するから、スピードは全く落ちていない。
ドゥヴェドを出てほどなくすると、リゾートの雰囲気もなくなり、原始のままかのような湖が現れたりと、一層荒涼としてきた。そんな所にある次の駅、オーヌ(Ånn)は、それでもちゃんとした長いホームがあり、待合室も駅前広場もしっかりしていた。ただ、これまでの駅より明らかに人家は少なく、1日2往復では使いづらいのだろう、乗降客はいなかった。それでも駅前広場に車は停まっており、発車したところに、列車を見にきているらしい、子供二人を連れた母親がいた。
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| ドゥヴェドの先の荒涼たる風景 | 乗降ゼロのオーヌ駅 |
あいにく雨が降り出したようである。標高がどんどん上がっているから、雨が降っているエリアに入ったのかもしれない。そんな所にある最後の途中駅、エナフォーシュ(Enafors)は、相対ホームで交換可能な駅だった。ここでは1名下車したようである。しかも列車を待っているらしい人が2人いる。この列車がストゥーリェンで折り返すので、それに乗るのであろうか。
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| 利用者も見かけたエナフォーシュ駅 | 雨のストゥーリェンに到着 |
森林が多かったが、最後で開けた高原の景色になり、線路が分かれて広がると、列車はぴったり定刻にストゥーリェンに到着した。ストゥーリェンは標高592メートルで、スウェーデン最高所の駅だそうだ。国境を越えたノルウェー側も下りなので、ノルウェーを含めた全線でもこの駅の先が最高所である。
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| スウェーデンの列車に乗る人が駅から出てきた | ストゥーリェン駅前 |
島式ホームの反対側には、既にノルウェーの列車が停車している。こちらの列車から降りたのは、20名あまりであろうか。あいにく雨も強くなっているので、多くの人が足早に向かいの列車に乗り換えていた。しかし数名はここで下車するのか、雨の中をホーム前方に行き、構内踏切を渡って駅舎へ向かったようである。乗り換え時間が24分あるので、私も駅を出てみる。そのとき、駅舎の方から大勢の人がホームに向かってきた。これは、逆のノルウェー方面から来てエステルスンド方面へ向かう人であろうか。こちらの列車が来るまで、ノルウェーの列車の車内で待つこともできるだろうが、雨の中をわざわざ駅舎へ行って待っていたのは、何故だろう。一旦締め出されたのであろうか。
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| ストゥーリェン駅舎 | 雰囲気のいい駅舎内 |
駅舎は古くて大きく重厚で、雰囲気も良かった。駅前はここも小さなスキーリゾートでもあるらしく、ちょっとそんな雰囲気があり、私は昔の活気がある頃の石打を思い出した。
駅舎の一角あたりが、カフェになっていて営業していたようなので、逆方向の乗り継ぎ客は皆そこにいたのだろうか、それともバスか何かでストゥーリェンまで来た人もいたのか、詳細はわからない。反対方向の乗継は、ノルウェーの列車が18時19分着で、スウェーデンの列車が18時37分発で、こちらは18時27分に着いたのだから、列車に乗り込むまでの待ち時間は8分しかないのだが。

いずれにしても、相互の乗り換え客でそれなりに活況を呈する雨のストゥーリェンであった。乗ってきたスウェーデンの列車が先に折り返して去っていく。その頃には駅舎にも駅前にも誰もいなくなったようで、雨のホームもひっそりしている。私もやる事がなくなり、車内で発車を待つ。
列車は18時51分、定刻に静かにスゥトーリェンを発車。寂しく雨がしょぼ降る駅のホームには、誰もおらず、さきほどのいっときの賑わいが嘘のように寂しい。当日のトロンハイムの日没時刻は21時49分で、まだ3時間もあるのだが、厚い雲の雨のもとでは、夕方の気配たっぷりである。
こちらノルウェーの車輌もスウェーデンに負けず劣らず近代的で、しかも編成はこちらの方が長く、旅客車5輌もつないでおり、加えて中ほどに短い電源車がある。電化・非電化の両方を走れる車輌のようだ。12年前は、私が乗ったのは長距離の客車列車だったが、途中で行き違う区間列車は古びた2輌の気動車だった。12年の間に大幅にグレードアップしたらしい。こちらも中ほどにスナックやコーヒーの自動販売機が設置してある。まあ、普通は自動だろう。車掌による手売りのスウェーデンが異質に思えるが、それを言うならイギリスのローカル列車の車内販売はもっと人手がかかっている。駅に停まっても買い物一つできない僻地が続くローカル列車での供食サービスは有難いが、国により、場所により、実態に大いに差があるようだ。
列車はこれまでと違い、スピードが遅く、ゆっくりと走る。ストゥーリェンからノルウェー国境までは、3.9キロなので、私はスマートフォンのグーグルマップを出して、国境を越える瞬間を見極めたのだが、特に国境らしい何かがある所ではなかった。ただ、国境を越えた途端、スピードが上がる。ノルウェーの鉄道のスウェーデン領内は、他国への乗り入れということで何か制限があるのだろうか、あるいは国境が標高のサミットで下り坂に入ったからだろうか。
スピードを上げたと言っても、スウェーデン内の快走とは異なり、カーヴも多く、勾配もスウェーデン側よりきつそうで、山道をゆっくり走る。スウェーデン側とノルウェー側の地形の違いは、ナルヴィクへの最北路線でも同様で、明確な差異があった。この列車のストゥーリェンから合流駅ヘルまでは、74キロを1時間25分で走るので、表定速度は52.2キロ。対するオンゲ~ストゥーリェンの表定速度は86.2キロあり、運転本数2往復だけの末端の山岳区間のドゥヴェド~ストゥーリェンだけで計算しても、87.3キロもあり、全体とほぼ変わらない。
雨の寂しい景色を眺めていると、女性の車掌が検札に来た。インターレールパスを見せると行先を聞く。ここも多くの駅がリクエスト・ストップだからであろう。
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| 綺麗でわかりやすい車内の案内表示 | 国境を越えてしばらくは深い山の中 |
ノルウェー最初の駅はコッペロ(Kopperå)で、ストゥーリェンから18キロ、国境からでも14キロほどある。そのコッペロは停車せず、徐行通過した。ノルウェー側の国境駅ではあるが、小さな駅のようで、右に使われてなさそうな、錆びた引き込み線が分岐するだけの、実質単線ホームの停留場のようであった。人家も僅かの寂しい所であった。そういえば最北のナルヴィクへ行った時は、逆で、スウェーデンの鉄道なのにスウェーデン側の国境駅は単線でホームだけの駅で、ノルウェー側が構内も広い大きな駅だった。
2つ目、19時16分のメロケー(Meråker)は停車した。しかしドア開きボタンが点灯しない。私が乗った最後尾はホームにかからないので、ドアは開かないらしく、近くに座っていたおじさんが教えてくれた。乗客は僅かだし、車掌が検札して一人一人の行先を確認しているから、降り損ない問題は起こらないのだろう。
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| メロケーが近づくと人家が現れた | 段々と平地へ下りていく |
メロケーから先も、渓流に沿ったりするところはあったが、徐々に平地へ下りていき、時折人家や耕地も見られる。次のグードー(Gudå)はあっさり通過、その先は日本にも良くありそうな、渓流に沿う区間がしばらく続いた。対岸に道路が見え、交通量は非常に少ないものの、たまに車が列車を追い抜いていく。
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| グードーからしばらく渓流に沿う | ヘグラまで来るとすっかり平地 |
グードーと次のヘグラ(Hegra)は長く、30キロもある。そこを35分で走破。雨脚がだいぶ弱まってきて、20時を過ぎたのに、外はさきほどより明るくなってきた。途中でだいぶ平地に下りたからなのか、にわかにスピードが上がる。ヘグラもあっさり通過。この線の1日2往復区間のノルウェー側は、雨だからかもしれないが、あまり目を見張る風景ではなかった。
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| ヘルが近づくと対岸に空港の管制塔が見える | ヘル駅の旧駅舎前を通過する |
ヘルが近づき、右手に大きな川が、その向こうにトロンハイム空港の施設がチラチラと見える。そしてこれまでより人家も増えると、ヘルに着く。さきほどのおじさんが、ヘルの旧駅舎は使われなくなって保存されていることを教えてくれた。その旧駅舎前をゆっくり通過し、間もなくヘルの新しいホームに停車した。ここはホームも長く、全部のドアが開けられ、それでも余裕がある。意外にもここで10名ぐらいの下車客があった。その一部はキャリーケースを引いており、こんな時間なのに、空港へ向かうのだろうか。空港駅は、ここから分岐するボードーへの本線で、次の駅である。しかし距離は近く、グーグル・マップで調べると、ヘル駅から歩いても25分程度で空港ターミナルにたどりつけるのだ。他方、1駅だけ列車に乗っていくこともできるが、次の列車は21時50分まで、1時間半も待つ。迎えの車もタクシーも見かけなかったので、あの人たちは空港まで歩いていくのか、あるいはここと空港の中間にあるホテルに泊まるのかもしれない。
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| 移設して近代的な駅になったヘルで奥が旧駅舎 | ヘルは10名前後の下車客がいた |
ヘルは、英語ではその名もずばり、地獄という意味である。もとよりノルウェー語にそういう意味はなく、古代ノルウェー語では、洞窟という意味らしい。この名前は既にマイナーながら話題になっており、英語圏の人が時々カメラを持って訪れるらしい。旧駅舎には、Gods-Expedition という看板があり、これが英語では神々の探検、といった意味になる。しかしこれもノルウェー語であり、Godsは英語のGoods、つまり荷物であり、荷物取扱所という、洋の東西を問わず、昔の駅に普通にあった施設なのである。なるほどこれは英語圏の人を面白がらせるに十分である。ノルウェーの人は皆、英語も堪能だから、当然、ユーモアのツボも理解していて、さきほどのおじさんも私に説明してくれた。
山間ローカル線の旅はヘルで終わりで、ここからは、トロンハイム~ボードー間の長大本線に乗り入れて、あと43キロ走り、トロンハイム中央駅まで行く。この区間はトロンハイムの近郊列車が走ってはいるが、本数は少なく、現にそれに乗って1駅、空港に行こうと思っても1時間半も待たないといけない。そんな区間に1日2往復、この線の列車が割り込んで入るわけだが、何とも不親切なことに、この区間だけの乗車はできないのだそうだ。ヘルを出ると、ホメルヴィク(Hommelvik)、ヴィカメー(Vikhammer)の2つがリクエスト・ストップの駅で、その先トロンハイム市内の5駅は完全通過扱いになっている。しかしその、ヘル、ホメルヴィク、ヴィカメーの3駅は、降車専用で乗車不可、と時刻表にも明記してある。だから降車が済めば、時刻表より早くても発車してしまう。この時もヘルを4分、そして停車したホメルヴィクも2分、時刻表より早発した。ヴィカメーは下車客がなく通過、そしてトロンハイム中央駅には時刻表より6分も早い、20時41分に到着した。
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| ホメルヴィクでも数名を降ろす | トロンハイム郊外の幻想的な夕暮れ |
12年前は、トロンハイムを出てすぐローカル線気分になり、北へ向かう高揚感もあった区間だが、山間部から降りてきてヘルで合流した今日は、トロンハイム郊外が普通の住宅地に見える。それでも海に沿う区間ではちょうど薄日が差してきて、幻想的な夕暮れの風景を見ることができた。トロンハイム中央駅のすぐ手前は駅間距離が極端に短く、町中の駅を次々と通過した。
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| 近代的になったトロンハイムに到着 | 12年前にはなかった近代的な駅舎 |
12年ぶりのトロンハイム中央駅も、また大いに変わっていた。降りたホームの上には無機質なコンクリートが覆いかぶさり、橋上駅なのか、階段やエレベーターがある。あの最果ての情緒溢れる駅が都会の駅と同じになってしまい、一瞬がっかりしたのだが、思い直せば、ここは冬が長く厳しい土地、地元の利用者にとっては有難い改善に違いない。
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| 駅前の町並みは昔のままのようだ | 新しく立派なトロンハイム中央駅 |
階段を上がって駅構内に出ると、そこは上から街を見下ろせる場所であり、そこからまた街へ下りる階段があり、駅前広場に出た。12年前は全く気配もなかった大きなビルが駅舎になっていた。恐らく上層階は鉄道関係の事務所なども入っているのだろう。地平階にはセヴンイレヴンともう一つのコンビニ、そしてカフェなどがあり、切符売場もある。風情は薄れてしまったが、便利になった。12年前は確か、駅構内での買い物ももっとずっと不便だったように記憶している。

かくしてスウェーデンとノルウェーの真ん中あたりを横断する、やや間延び感のある長距離鈍行の旅が終わった。次々と絶景が現れて風景観察に忙しい路線とは違うが、これはこれで良かった。後から思い返せば、北欧らしい大柄な風景をのんびり堪能した長旅のひととき。広く皆さんにお勧めするかどうかは微妙だが、旅自体は快適で、座席も乗り心地も良く、飲食にも困らない。本稿をななめ読みして少しでも興味を持ったならば、この方面への旅のルートに組み入れることをご検討いただきたい。
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