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スタラ・ザゴラ~ゴルナ・オリャホヴィツァ 目次


目次 (1) ブルガリア国鉄第4線 Bulgaria BDZ Line No.4
スタラ・ザゴラ Stara Zagora
スタラ・ザゴラ~トゥロヴォ Stara Zagora - Tulovo
(2) トゥロヴォ~バゾヴェツ Tulovo - Bazobec
バソヴェツ Bazovec
クラステツ Krastec
(3) ラドゥンチ Radunci
ラドゥンチ~ツァレヴァ・リヴァダ Radunci - Tsareva Livada
ツァレヴァ・リヴァダ~ゴルナ・オリャホヴィツァ Tsareva Livada - Gorna Orjahovica

ラドゥンチ Radunci


 かくしてクラステツ13時24分発スタラ・ザゴラ行きの客となる。ゴルナ・オリャホヴィツァ発の長距離鈍行で、さきほどの姉妹列車と言える。といっても乗るのは僅か2駅15分。

 車内はさきほどより空いていて、客のいないコンパートメントもいくつかあったので、その一つに入り、座る。ほどなく初老の車掌がやってきた。彼はクラステツでホームに降りて私が乗り込むのをしっかり見ている。私が「ラドゥンチ」と言うと、一瞬、意外そうな顔はしたが、すぐ微笑に変わり、「ラドゥンチ?」という感じで聞き返し、軽く頷くと手書きの切符を作成し始めた。英語はできそうもないが、いかにもベテランの風格ある車掌である。

 スタラ・ザゴラで買った切符もQRコードが付いていたから、発券機ぐらいは導入されているのかと思ったが、昔ながらのカーボン紙を使う手書き切符を、丁寧に作ってくれる。2駅13キロ乗車の運賃は、1.50レヴァ(約112円)であった。短距離はやや割高なようである。それでも安いことには変わりなく、この値段でコンパートメントを独占し、移動しながら優雅なひとときを過ごせるなんて、都会の通勤電車を思えば夢の世界である。

 定員8名のコンパートメント車内  廃工場が見えるとラドゥンチ

 今はさきほど乗ってきた区間を引き返しているわけだが、今度も目新しいものは発見できなかった。つまり、両側はずっと山林で、開けた景色は見られない。

 小さな山村集落がある途中駅のボルシュティツァでは、若い男女が下車した。今ふうの普通の都会の若者と変わらないが、ハイキングなどではなく、この村に何か縁か用事があって降りているのであろうか。それでも列車にスマホカメラを向けているので、少なくともここの住人ではなさそうである。ボルシュティツァは駅自体は単線で寂れているが、ボルシュテンスカ川という川の名前とも関係ありそうな地名であり、このボルシュテンスカ川源流地域の中心集落なのかもしれない。

 山歩きの疲れが出る頃でもあり、もっと乗っていたかったが、左手に工場の廃墟が現れ、あっという間にラドゥンチに着いてしまった。やはり下車客は私だけで、乗る人もいない。そしてさっそく、降りた私に向かって黒犬が吠え始めた。2人の女性の駅員も、変なのが降りてきたなという胡散臭そうな目で私を見ているような気がする。職務には忠実そうで、制服制帽の直立不動で列車を見つめ、ほどなく発車合図の標識を上げた。

 私はもちろん、降りたホームから列車の発車風景を撮影する。どうせ英語も通じないだろうが、目が合えばちょっと声をかけてみようと思っていた。しかし列車が走り去るのを見てから振り返れば、駅舎内に戻っていくところであった。犬だけが相変わらず吠え続けている。

 次に乗るゴルナ・オリャホヴィツァ行きは14時28分発なので、あと45分ほどある。駅にいても居心地が今一つなので、とりあえず駅を出て歩いてみる。ボルシュティツァ方向に線路と並行してあって、廃工場に向けて細い道が緩い登り坂になっている。というより、この駅に達する道は、それしかない。その道を歩いていると、はるか下方を今の列車が走り去る音が、ほんのかすかに聞こえてきた。駅の反対側は、すぐ下を、線路が二重に通っている筈の、そのラドゥンチなのである。しかし、駅員の目もあるし、ホームよりも先へ線路を横切って歩いていくのはまずいだろう。それに、そこまで行っても下の線路は見えないような気がする。いや、もしかすると木々の間からわずかに見えるのかもしれない。そういったちょっとした探索ができれば、この駅の下車も楽しいだろうが、線路に不法立ち入りしない限り、そちらの方へ行く道が全くないので仕方ない。

 ラドゥンチに到着  ラドゥンチを出ていくスタラ・ザゴラ行き

 細道は廃工場の前で折り返すように右に曲がっている。さらに上がっていくと、別の道に出た。グーグルマップで事前に調べてきた通りで、駅から歩いて3分程度である。これは、クラステツ駅前を通っていて少し歩いたのと同じ路線番号の主要道路であり、鉄道の並行道路である。しかし来てみれば、先ほど歩いた山道とほとんど変わらない細道で、やっと乗用車がすれ違える程度の幅しかない。人家も他の建物もないし、人も車も全く通らない。しかし道路標識はあって、ボルシュティツァと書いた大きな標識は、英語と2ヶ国語の新しいものであった。間違って行き止まりの方(ラドゥンチ駅)へ行かないように、ボルシュティツァはこちらですよ、と示しているわけだが、こちらがラドゥンチ駅、という標識は全く無いのである。

 発車後駅舎へ戻る駅員  駅前の一本道

 バゾヴェツほど時間もないし、時間があっても次の駅までは、あちらのように歩けるほど近くない。地図で見ても、徒歩圏内には何もない。ただ徒歩15分ほどの山の中に一つだけ、廃ホテルがあるようである。他に行く所がないし、興味はあるが、ちょっと遠い。仕方なく私はそのあたりに座り、スタラ・ザゴラのスーパーで買って来た水と食料で、昼食にした。幸い、午後になって気温もさらに上がり、寒さは感じない。あの駅員と犬のいる駅のベンチよりは、ここの方が気持ち良いというか、気が楽である。そうしている間、人も車も全く通らなかった。

 上から見下ろすラドゥンチ駅舎と線路  駅入口の交差点で左がラドゥンチ駅

 それにしても今日、この駅の乗降客はあるのだろうか。もう信号場にしても良さそうに思える。8の字ループを観光資源にするにも難があるし、昔がどうかは知らないが、駅としての役割は終えているように見える。だがこの駅は、3往復の普通列車だけでなく、快速どころか1日1往復のインターシティーまで停車している。通過しているのは夜行列車と、プロヴディフ直通快速のうち朝の南行き列車だけで、よって5.5往復の停車本数がある。スタラ・ザゴラとトゥロヴォの間の2つの駅も、さきほどは乗降客はなかったが、あちらはまだ、駅から徒歩圏内に小集落がある。にもかかわらず、普通列車3往復しか停車しない。

 そういえば、クラステツもここも、駅員が常駐しているが、駅前に車が全く停まっていなかった。ということは、駅に勤務する駅員も、列車で通勤しているのだろうか。ポイントや信号が自動化されていないからこそ、駅員が必要なのだろう。ということは、夜行も通るから、24時間体制の筈である。もしかすると、駅を廃止しないのは、そして停車本数も多いのは、通退勤する駅員の乗降のために必要だからかもしれない。


 少し早いが駅へ戻る。駅舎の上の道を通る所でまた犬が吠え出す。駅員の一人が出ていたので、売っていないだろうとわかってはいたが、クラステツと同じようにチケットのことを聞いてみる。やはり列車内で買えというような事を短いブルガリア語で言ったようである。結局、別に特に冷たいわけではなく、言葉も通じず、遊び半分でやってきた風なよそ者には格別の関心がないのだろう。私が熱心に写真を撮っているのを見ているから、どんな人間で何しに来たかもわかっているだろうし、多分そういう人が時々は来るのだと思う。そして、駅員とそうやって一言、言葉を交わしただけで、犬はパッタリと吠えなくなった。

 聞き逃したかもしれないが、今度は下の方を通る列車の音は聞こえなかった。列車の時刻が迫り、2人の駅員が駅舎前に立った。ほぼ定刻、また電気機関車に客車2輌の列車がやってきた、今度もまた私の他、この駅での乗降客はいなかった。


ラドゥンチ~ツァレヴァ・リヴァダ Radunci - Tsareva Livada


 1輌目から乗ってみたら、どのコンパートメントも客がいたので、2輌目に移ってみる。そこは変わった車輌だった。片側に長い座席が向かい合わせという配置である。もともとコンパートメントだった車輌から、壁を取り払ったと思われるが、こんな車輌は初めて見た。つまり8人掛け1ボックスのボックスシートである。こちらもどのボックスにも1人か2人は客がいた。もちろん大半は空席だから、遠慮なくどこでも座ればいい。それはコンパートメント車も同じなのだが、こうして見ると、壁を取り払ったこの車輌の方が見晴らしがいいので、私は8人掛けの窓側におばさんが1人座っている所の通路側に座った。

 コンパートメント車改造と思われる客車  クラステツでは貨物列車と行き違い

 ラドゥンチからクラステツまでは本日3度目の乗車で、そこからバゾヴェツまでは2度目、バゾヴェツからが初乗車の区間になる。停車3度目のボルシュティツァでは1名下車。この駅は毎回利用者がいる。対してさきほど乗車したクラステツは、今度は乗降客ゼロだった。お客はいないが、長い貨物列車が停まっていた。ほとんど無蓋貨車である。

 バゾヴェツは、数名の下車客がいた。住人であろう。降りた人が駅舎のすぐ横の道を下っていく。さきほどはその先の踏切の所を右へ行ったのだが、後から地図を見て、こちらの方が道がループ下の線路まで続いていることを知った。どうやらこの道の下の方が人家が多いらしい。いずれにしても、バゾヴェツは人がそれなりに住んでいて、駅利用者もいる所である。

バゾヴェツで降りて集落へ向かう客  ループ区間の景色もこんな木々ばかり

 バゾヴェツからは、右に楕円形の大回りループで下っていく、駅近くの下をトンネルで通過するのは3分後ぐらいだろうか。さきほど上からちらりと見たので、右窓に立って景色を見るが、木々がさえぎってほとんどわからない。一度だけほんの一瞬、上の方にちらりと線路らしきものが見えた。これも夏は無理であろう。

 バゾヴェツ駅の下をトンネルで抜ければループは終わりで、同じような山林の中を西へ進むと、次の駅はラデヴチ(Radevci)。荒れ果てた単線の駅で、乗降客もなかった。バゾヴェツから鉄道路線距離は7.2キロだが、直線距離なら2.6キロ程度である。道路なら近いかというと、グーグルマップでの道路距離は7.6キロと出てくる。道がないからで、一旦クラステツ駅まで1キロの、さきほど歩いて通った分岐点まで行ってから、歩いてきた道をバゾヴェツ方向へ上がっていかないといけない。つまり、車や徒歩なら、隣駅バゾヴェツよりもクラステツの方が近い。

 プラツコヴチ手前に見える町並み  プラツコヴチ駅

 次のプラツコヴチ(Plachkovci)が近づくと、右手の谷間にこれまでより大きな集落が現れた。車窓からこれだけ家が固まっている景色を見るのは、スタラ・ザゴラを出て以来だ。ドームを有する立派な教会も見えて、プラツコヴチへ到着する。駅も立派で、乗降とも数名ある。夜行を含む全列車停車駅であり、早朝に1本、この駅始発のゴルナ・オリャホヴィツァ行き普通列車がある。村は人口1500人ほどだそうで、山歩きの拠点としても知られるそうだ。峠越えを控えた北側最後の宿場町といった立地だが、そういう機能で栄えた歴史があるのかはわからない。

 単線の小駅ボジュコヴチ  活気を感じるトリャヴナ駅

 次のボジュコヴチ(Bozhkovci)は単線の無人駅だが、これまでのそういう駅と違い、谷が開けており、並行道路が見えて、その沿道にパラパラと人家がある。つまり、ループの前後と比べれば、普通の田舎の景色になった。次のトリャヴナ(Trjavna)がプラツコヴチに続く全列車停車駅で、駅舎のある反対ホームには現代っ子という感じの若い子が10人ぐらいいる。まだ30分近くあるが、スタラ・ザゴラ行きを待っているのだろうか。私は、時代離れした山村から現代に舞い降りたような気分になった。この列車もここで結構乗客が入れ替わった。調べれば人口も1万ちかくある、大きな町である。ただ、車窓には廃工場など雑然としたものが目立った。

 廃工場が目立ったトリャヴナ付近  ツァレヴァ・リヴァダの駅舎側ホーム

 トリャヴナから2つ目が、ツァレヴァ・リヴァダ(Tsareva Livada)。町は小さいが、ガブロヴォ(Gabrovo)への支線が分岐する主要駅で、この列車は4分停車し、反対列車との行き違いもある。ガブロヴォはこの地域の中心都市の一つで、鉄道ではここから分岐する盲腸線の終着駅である。ダボヴォとゴルナ・オリャホヴィツァの間、107キロで、他の路線が分岐するのはここだけである。ツァレヴァ・リヴァダ~ガブロヴォは、途中3駅17キロで、本数は1日8往復と、本線と同じ本数があり、本線列車との接続を考慮したダイヤになっている。この列車からも好接続で、15時35分発がある。


 駅は線路の両側に狭いホームがある構造で、下車する人は右側へ、ガブロヴォ行きに乗り換える人は左側へ降りればいい。古い客車は手動ドアだからどちらにも降りられる。乗換え客も結構いて、そこそこ活気がある。そのガブロヴォ行きは、赤い4輌編成の電車であった。客車の旅は味わい深いが、見ればあちらにも乗りたくなってくる。今回、旅程の都合でこの線の乗車は諦めたのだが、実際に現地に来てみれば、何としても乗れる旅程を組むべきだったなと、ちょっと後悔する。


ツァレヴァ・リヴァダ~ゴルナ・オリャホヴィツァ
Tsareva Livada - Gorna Orjahovica


 ツァレヴァ・リヴァダでは、客はある程度入れ替わったが、乗車率は同じようなもので、定員8名の大ボックスに、どこも1~2名程度の客が座っている。峠越え区間では乗降が少なく、ある程度の距離を乗る客が多かったが、このあたりまで下りてくると、短距離乗車の客が増えているようだ。駅間距離も短くなり、小駅でも1人か2人の乗降がある所が多い。

 寂しい無人駅バチョ・キロ  ドリャノヴォは綺麗で大きな駅舎があった

 平凡にはなってきたが、次のバチョ・キロという単線の駅は、草むしたホームに小さな待合室というローカル駅の味わいたっぷりの駅であった。と思えば次のドリャノヴォは。また大きな駅舎があり、駅員も乗降客もいて、町も結構大きい。

 ドリャノヴォ駅前の風景  ソコロヴォ駅舎

 ガブロヴォ支線の乗換駅ツァレヴァ・リヴァダで上下列車が行き違うダイヤを組んでいることもあって、その先、ダイヤを見る限り、列車行き違いのない駅が続くのだが、実際は1駅ごとぐらいに交換設備があり、そういう駅には駅員がいる。ラドゥンチもそうだったように、駅員は女性が圧倒的に多い。大体は2人いて、1人が制服制帽で発車合図を出し、もう1人はオレンジの作業着を着ており、帽子は被らない。全てではないが、このパターンが一番多い。

 デベレツで発車合図を出す駅員  ヴェリコ・タルノヴォが近づいた

 これまでと規模の違う中層の団地などが見えてくると、列車はヴェリコ・タルノヴォ(Veliko Tarnovo)に着く。今回の全区間でスタラ・ザゴラの次に大きな都市で、ブルガリア第16位の人口を持つ。鉄道はこの路線1本だけで、分岐する線もなく、ソフィアと直結する本線ルートからは外れているが、このあたりの中核都市である。駅自体は、他より特に大きいわけでもなく、乗降客もそこまで多くはなかった。列車も1分停車ですぐ発車する。

 沿線随一の都市ヴェリコ・タルノヴォ  妙に立派な駅舎のトラペジツァ

 ヴェリコ・タルノヴォからゴルナ・オリャホヴィツァは、あと14キロで途中2駅。本線との連絡用に区間列車があっても良さそうだが、ヴェリコ・タルノヴォが始発・終着の列車は全くない。景色も平凡になったし、もうさきほどのループ区間の山の中がはるか昔のような気がする。

 次のトラペジツァ(Trapezica)には、御殿のような妙に立派で荒れていない駅舎があった。と思えばその次の、最後の途中駅サモヴォデネ(Samovodene)は、構内は広いが古びた駅舎であった。この線に乗って気づいたのは、駅舎に個性があることである。前にスロヴェニアのローカル線に乗った時は、似たような駅舎が続いて、これでは降り間違えないものかとすら思ったものだ。近代的な駅舎はスタラ・ザゴラ以外にどこにもないので、駅舎巡りだけでも楽しめそうな線である。

 古びた最後の途中駅サモヴォデネ  ゴルナ・オリャホヴィツァに到着

 サモヴォデネは最後の途中駅、と書いたが、実はその先、操車場がある所に、駅というか、乗降場のようなものがある。時刻表検索で全列車を調べた時に見つけたのだが、変な駅で、北行き列車1本が朝の7時14分に停車するが、反対方向は全く停まらない。ブルガリア国鉄のサイトでは、運賃検索も切符のオンライン購入もできるのだが、時刻表では出てくるにもかかわらず、この駅発着の運賃を調べたり切符を買おうとしても、エラーになって表示されなかった。グーグルマップにも表示されるので、見ていたが、ホームなどはなさそうだった。駅前に当たる操車場の反対側の道路がそこだけ広くなっており、駐車場のようになっている。想像するに、操車場で働く鉄道職員を降ろすための停車ではないだろうか。操車場の反対側は畑か草原で、人家や建物などは何もない所である。

 ゴルナ・オリャホヴィツァの1番ホーム  ゴルナ・オリャホヴィツァの駅舎内

 終着ゴルナ・オリャホヴィツァには定刻より少し早着した。この駅も古びてはいるが、幹線途中主要駅の風格たっぷりの、大きな駅と言っていい。1番ホームに面してカフェがあって、列車を待ちながらなのか、お客が結構いる。鉄道がそれなりに利用されているのがわかる駅ではあった。ホームや駅舎内にはレトロな発車案内板があるが、ブルガリア語のみで、英語はなかった。

 廃商店も多いゴルナ・オリャホヴィツァ駅付近  ゴルナ・オリャホヴィツァ駅前

 駅前は人がパラパラといたが、雰囲気は寂れ感たっぷりであった。ビルもあり、飲食店もいくつかあるのだが、モダンでおしゃれな店は皆無で、閉店して看板だけがむなしく残っている所も多い。駅前にタクシーが結構いて客待ちをしている。鉄道の要衝だから、駅付近にそれなりに人も見られるが、ゴルナ・オリャホヴィツァの町の中心部は1.5キロほど南なのである。

 何となくパッとしない終わりではあるが、時代がかった汽車で山を越える旅は、理屈抜きに楽しかったし、途中で下車して山道まで歩いたのも、良かったと思う。その分余計に、ここゴルナ・オリャホヴィツァで駅から町の中心まですら、歩く気がなくなったのは、致し方ないことであろう。多分、二度と乗ることはないだろうが、この通り、葉の落ちた冬ですらループ線の眺望は期待できないので、もし再度機会があるなら、次は爽やかな新緑の頃にでも乗ってみたいと思う。



欧州ローカル列車の旅:スタラ・ザゴラ~ゴルナ・オリャホヴィツァ *完* 訪問日:2023年2月25日(土)


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