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ローカル列車とは


ローカル線とは、ローカル列車とは・・・・ 厳密な定義があるわけではありませんし、該当するかどうかの議論など、無意味だとは思います。

本サイトのタイトルは、「ローカル線」ではなく「ローカル列車」にしました。どう違うのか、どこまで入るのか・・・ 議論は無意味と言いながら矛盾しますが、このページではそういった事を書いておきたいと思います。決めるのが目的ではなく、いかに曖昧で境界が難しいかということをお伝えするのが目的だと思っていただければいいかと思います。

幹線のローカル列車


日本での例ですが、私は少し前に、山陽新幹線の4輌編成の「こだま」に乗りました。日本の新幹線は、どう考えてもローカル線でもローカル列車でもなく、ローカル列車といったようなテーマの対象からは真っ先に外れるということに、どなたも異論はないでしょう。にもかかわらず、私はその時、ローカル線に乗っているような気分になりました。何しろグリーン車も指定席車も車内販売もありません。ガラガラの車内、「のぞみ」に抜かれるための長時間停車、そして、駅によっては数名しかいない乗降客。乗客も軽装の短距離客ばかりです。一旦走り出せば時速200キロを出す超特急の新幹線ですから、やはりローカル線ではありませんが、醸し出す雰囲気は、特急というよりはローカル線でした。路線としてはもとよりローカル線ではありませんが、ローカル列車とは呼んでもいいのではないか、そう感じました。

 ローカル線を感じた特急新幹線こだま号
(日本・新岩国駅)

それでもやはり、日本の新幹線に相当する、フランスの TGV やドイツの ICE などは、どんな末端区間で運転本数や乗客や編成輌数が少なくても、本サイトのメインのテーマとしては、対象外にします。ローカル列車乗車の前後に利用した場合は、付随的に紹介することはありますが、サイトの主テーマとしての記述紹介ではありません。

「ローカル線」と「ローカル列車」の違いですが、後者は幹線の鈍行列車も対象に入るという点で、より幅が広い、と考えています。超大編成の特急列車が行き交う幹線にも、短い編成の各駅停車が細々と走っています。その多くは本数も少なく、乗客も少なく、乗ってみると、ローカル線以上にローカルな雰囲気を醸し出していることも少なくありません。そして、本当のローカル線と違い、特急列車に抜かれるための長時間停車があったりします。この一見無駄な待ち時間がまた、のんびり行こうというローカル列車の雰囲気を強めてくれるのです。こういった列車もまた、高速列車の対極にあるローカル列車だと言えます。

運転本数の問題


一般的には、運転本数が少ない路線はローカル線で、そこを走る列車はローカル列車でもあるでしょう。しかしこれにも多数の例外があります。特に北欧・東欧や旧ソ連諸国には、一日に1〜2本しか走らない路線なのに、寝台車や食堂車までついた長編成の列車が走っているケースがあります。名前もIC、つまり特急だったりするので、これは果たしてローカル列車だろうか、という議論になってしまいます。このあたりは乗ってみての感覚で決めようと思います。

 人家も無い山中の駅だが毎時1本、時には混合列車でやってくる
(スイス・ベルニナエクスプレス・ベルニナスオト駅)

ドイツやベネルクスでは、各駅停車しか走らない地方路線でも、30分や1時間ヘッドで等間隔に運転されている路線が非常に多いです。つまり、鉄道として残すところは頻度を確保して乗客を確保し、それができない所は廃止してしまったのでしょう。この運転形態と運転本数は、日本でも同様ですが、都市型・近郊型輸送システムであって、ローカル線とは言えないとは思うのですが、実際に乗ってみると、列車は短編成だし、乗客も少ないし、走る所も田舎で、ローカル列車としか感じられないところも少なくありません。この点は難しいところですが、一応の目安として、日中の運転本数が1時間に1本かそれ以下の所は、環境その他によっては取り上げることとし、日中に30分間隔かそれ以上の頻度で列車がある所は、原則として対象としないことにしました。しかし、スイスなどには、狭軌の山岳鉄道などで、意外と運転頻度の高い線区もあります。これらは難しいことを言わず、取り上げてしまうこともあります。

風景と自然の問題


一般に、山岳地帯や農村地帯など、人口密度の低い田舎を走る路線はローカル線で、住宅や工場、ビルなどが建ち並んでいる所ばかり走る路線は、ローカル線ではありません。後者は、必ずしも幹線ではありませんが、運転本数の多い都市圏輸送を行っている線区です。

しかしこれも沢山の例外があります。日本にも、都会の中のローカル線といった取り上げられ方をしている線として、例えば鶴見線などがあります。といっても、毎日、それも混雑する朝夕にこの線で沿線の工場や事業所に通っている人は、恐らく鶴見線がローカル線だとは思っていないでしょう。しかし休日に乗ってみれば、運転本数も少なく、お客もまばらで、沿線にも人の姿があまり見られません。そうなれば、これぞ都会の中のローカル線、といった形でマスコミにも取り上げられてしまうというわけです。これに近い路線とか、平日朝夕の通勤時間帯しか走らない路線などは、それ自体、興味深いので、沿線風景は平凡な住宅地かもしれませんが、ローカル列車として取り上げていきたいと思います。

 人口密度の低くないエリアでも列車の運転本数は多くない
(フランス・マロム駅)

等時隔・高頻度運転のベネルクスやドイツと対照的なのは、お隣フランスです。時刻表だけを見る限り、フランスはローカル線の宝庫です。 一部の幹線や都市近郊を除くと、おしなべて運転本数が少ないのが、フランスの特徴です。ドイツとフランスは、ヨーロッパの大国横綱同士で、規模的にも似た印象を受けると思います。しかし、もしこの2つの国の鉄道に全線乗車しようと思ったら、ドイツに比べてフランスは何十倍も大変です。ドイツは上に書いたように、殆どの路線で1時間に1本以上の運転本数がありますし、少ない所でも2時間に1本です。しかしフランスは、そこまで超過疎地でもないのに、朝夕にかろうじて数本が運転されるだけとか、土日は全く走らない、といった路線がかなりあるのです。フランスは、時刻表だけを頼りにすれば、超ローカル線がひしめいている国です。ですが実際は、お客の少ない日中は代わりにバスを運転する等の方法で効率化を図っているので、運転本数の少なさから、どんなすごい田舎だろうと思って乗ってみると、意外に人家の多い所も走るので、逆にびっくりすることもあります。

停車駅と列車種別の問題


ローカル列車といえば、やはり鈍行でしょう。しかし、必ずしも各駅停車である必要もありません。今、日本のJRでは、ほとんどの列車が特急と普通(快速)に二極分化してしまい、国鉄時代の末期頃まで全国を走っていたローカル急行は、ほぼ消滅してしまいました。

欧州にも類似の流れはありますが、散発的にはまだまだ、日本の旧国鉄の「急行」に相当する列車はかなり残っています。特に、高速化の対象からはずれた、亜幹線とでもいうべき路線の列車に乗ると、国鉄地方交通線の気動車急行の記憶と重なるような感覚を味わうこともあります。これらはローカル列車として積極的に取り上げていきます。というよりも、ローカル列車として「乗りたい」列車です。

なお、英語のローカル列車には、普通列車(=各駅停車の類義語)という意味もあります。そうすると、山手線もローカル列車になってしまいますが、このサイトではそういう議論はしないことにします。

国際ローカル列車


日本では決して味わえない、ヨーロッパの鉄道旅行の醍醐味の一つが、鉄道に乗ったままで国境を越える体験です。もっとも、シェンゲン協定加盟国の拡大に伴い、今は国境を越える国際列車であっても、多くは国内列車と変わらなくなってしまいました。少し前までの、ちょっと走っては出入国審査官が乗ってきて、パスポートチェックがあった、あの時代。思えば面倒ではありましたが、それ以上に懐かしさを感じます。

 運転本数週1往復の究極の国際ローカル列車スロヴァキア行き
(チェコ・ビルニチェ駅)

今日のヨーロッパでは、パスポートも持たずに気軽に乗れる、国境を越えて隣の国にちょっと買い物、といった地元客向けの列車が、国境を越えて頻繁に走っていたりします。しかし、そういう所は割合としては少数です。やはり、国境越えの区間は運転本数が極端に減る所や、普通列車は国境の手前が終着で、国境を越えて隣の国へ行くのは特急だけ、といった線区の方がはるかに多いです。

途中で国境を越えようが越えまいが、そんなことはローカル線やローカル列車の定義とは関係ない、と言えばそうなのですが、日本には存在しない国際列車は、何度乗っても興味が尽きません。ですので、意識して積極的に取り上げていきます。

運転本数から見ると、国境を越える区間に関しては、むしろ、優等列車が数本だけ、という区間がローカル線かもしれません。逆に、普通列車が割と高頻度で運転されている国境越え区間は、優等列車がなくても、ローカル線でもローカル列車でもない所があります。


2012年7月脱稿・2014年12月修正及び写真追加