欧州ローカル列車の旅 > 2023年 > イタリア > サルデーニャ北部の狭軌鉄道 (2)

サルデーニャ北部の狭軌鉄道 目次


目次 (1) サルデーニャの鉄道 Railways in Sardegna
サッサリ~ソルソ Sassari - Sorso
ソルソ Sorso
マコメル Macomer
(2) マコメル~ヌオロ Macomer - Nuoro
サッサリ~アルゲーロ Sassari - Alghero
アルゲーロ Alghero

マコメル~ヌオロ Macomer - Nuoro


 マコメル17時10分発ヌオロ行き最終列車は、私とあと1人の乗客を乗せて定刻に発車した。土曜だからかもしれないが、予想しなかった寂しさであり、若者で活気があったサッサリ~ソルソ線とも対照的である。ちなみにこの路線は日曜は全面運休である。それゆえこの列車に乗るスケジュールを組んだのだが、いつもながら、土曜のこういう状況を見ると、平日はもう少し乗っているのかが気になってしまう。


 この線のダイヤグラムは上記の通りで、赤線は夏休み等の「休校日運休」である。ゆえに、日本の多くのローカル線同様、免許を持たない層の通学輸送が、この路線が生き残っている理由の一つかと察せられる。その割には、最大都市ヌオロ発の午後は、14時33分発の次が16時56分発で、ここがちょっと空きすぎのようにも思える。

 全線58キロを走る列車の所要時間は大半の列車が1時間16分で、一部が1時間20分かかっている。速い列車の表定速度が45.6キロなので、狭軌鉄道としては善戦しているが、沿線人口の少なさは如何ともし難いのであろう。最大都市ヌオロからカリアリなどの島内各都市へ行くのにも遠回りで時間もかかるから、そこはバスの役割のようだ。何より起点であり、唯一、国鉄と接するマコメルが、この通り、小さな町なのが致命的ではないだろうか。

 列車は発車していくつもの錆びた線路をかき分けると、さっそく緑の多い郊外風景となり、ぐるりと右へカーヴする。下り勾配なのは乗っていてもわかる。そしてマコメルを出て3分ぐらいで、さきほど駅近くの廃墟から見下ろした所を走る。右手車窓上方に、さっき自分が立った廃墟がはっきり見えた。こちら側から見ると、それだけでなく、丘の上の崖っぷちとも言っていい場所に、結構家やビルが建ち並んでいるのがわかる。あのすぐ向こうにターミナル駅があるとは、知らなければ想像もつかないだろう。

 丘の上の建物の向こうがマコメル駅  立派な道路が見えてきた

 大カーヴで下った後も、平坦ではなく、カーヴが多い。右手に広い平原が見えてきて、あそこを一直線に通せばいいのにと思えるが、そうもいかない地形なのであろう。新しそうな道路の高架も見えてくる。どこでも鉄道の競争相手ではあるが、走っている車も少ない。移動需要そのものが小さいのだろう。

 最初の駅、ビロリ(Birori)は、リクエスト・ストップなので、徐行で通過、次のボルティガリ(Bortigali)は交換設備があり、停車する。乗降客は無いが、車掌が降りて、駅舎にある何かのスイッチを操作している。その次のシラヌス(Silanus)も同様で、車掌が同じことをしている。両駅とも駅舎が良く似ていた。ここでマコメルから乗っていた唯一の乗客が下車してしまい、私一人になってしまった。

 ボルティガリが最初の停車駅  シラヌスで唯一の乗客が下車

 列車は人家もまばらな平原を淡々と走る。単線のレイ(Lei)を徐行で通過、次が反対列車と行き違いのため3分停車のボロタナ(Bolotana)である。大半の列車がここで行き違い、停車時間も取ってあるので、途中最大の駅かと思ったが、やはり駅前は寂しく、人家もパラパラあるだけであった。それでも女性が1名、乗ってきた。

 交換駅のボロタナで1名乗車  車掌が反対ホームで旗を出す

 車掌はここでも駅舎にある何かを操作し、それから反対ホームへ行き、赤い旗を出す。どこも駅員はいないが、信号やポイントが完全には自動化されていないためだろうか、車掌が運転関係の仕事もかなりしている。ほどなく列車が近づく音がする。私もホームでカメラを構えて待つ。


 現れたマコメル行きは、何と旧型車であった。サッサリでもマコメルでも、廃車のような感じで留置されているのを見たので、もう乗れないのかと思っていたが、こうして現役でまだ走っているのであった。しかも車体に落書きもなく、綺麗に整備されている感じがする。あちらは数名の乗客がおり、カメラを構えている私に向かって手を振る女の子の2人組がいる。

 新旧の車輌が並んだ  マコメル行きが先に発車していく

 あちらの列車は乗降客もなく、先に発車していった。時刻表ではこちらが40分着43分発で3分停車、あちらは41分着42分発の1分停車である。先に着いた方が後から出るのは、通票時代の名残りだろうか、それとも何か閉塞方式の事情だろうか、各駅でホームに降りて何か操作をしている車掌の行動ともども、私には理解できなかったが、とにかくどちらももっと停車時間は長く、こちらは3分遅れで発車した。

 再び乗客数が私を含め2名となり、寂しい草原地帯を東へ進む。一つリクエスト・ストップの単線の駅を通過して、次がイスクラ(Iscra)という駅である。また駅員が駅舎へ向かい、何かを操作している。私はドア前に立ってホームの写真を撮る。そこへ高校生ぐらいの女の子が4人、急ぎ足でやってきた。乗り込もうとしてカメラを構えている私に気づいて笑顔でポーズを取る。

 イスクラで女の子が4名乗車  乗降ゼロのオロテリ駅

 イスクラは、閑散とした草原地帯の寂しい駅である。しかしダイヤによれば、朝に1本、この駅始発のマコメル行きが出る。それは休校日運休で、休校日はボロタナ始発になる。だからきっと通学生がいるのだろう。それと、今このヌオロ行きに乗ってきた女子グループとの関連はわからないが、とにかく私を含め6名と、これまで最高の乗客数になり、寂しい草原地帯をさらに東へ進む。駅間距離も長くなり、次に停まるオロテリ(Orotelli)でも、車掌がホームに降りて何か操作をしているが、乗降客はいない。

 起伏の多い緑の風景が続く  プラト・サルド駅付近

 終点ヌオロの一つ手前のプラト・サルド(Prato Sardo)が近づくと、景色が変わってきた。草原地帯で羊がいたりするのだが、その中に工場や倉庫などが点在する産業地帯になってくる。沿線最大でサルデーニャ島でも有数の都市ヌオロが近づいた、と感じる。産業地帯の駅だからか、土曜の夕方の乗降客はいない。もっともこういった田舎にある産業地帯ではほとんどの人が車通勤だとは思うが。

 ヌオロが近づくと集落が現れる  ヌオロ駅手前の風景

 そんな景色を見たので、これで徐々に町らしくなって終わりか、と思ったが、最後の一駅間の景色がなかなか圧巻であった。マコメル同様、起伏が結構激しく、複雑な地形であり、丘の上や中腹に住宅やその他の建物が見えてくる。5~6階建てぐらいの中層アパートも多い。背後に赤茶けた岩山がそびえている所もある。マコメルより大きな町なので、むしろ見応えがある。実際にあそこに行って道を歩けば平凡な住宅街かもしれないが、車窓から見る景色は時に神秘的ですらあった。

 ヌオロ駅は、風情ある終着駅とは程遠い、壁とコンクリートに囲まれた駅であった。ヌオロは、サルデーニャ州に8つある県の一つ、ヌオロ県の県庁所在地であり、都市としてはサルデーニャ第6位の人口を有する中核都市である。しかし鉄道はこの狭軌路線しかなく、高速鉄道網から取り残されている。そういう町がどんな所か、少し歩いてみたいのだが、残念ながら、折り返し最終列車まで22分しかない。しかも少し遅れて着いたので、駅と駅前を急いで観察するのが精一杯である。

 終着ヌオロに4分遅れで到着  ヌオロ駅

 駅前は、車窓から見た神秘的な光景とも結びつかない、普通の、どちらかと言うと平凡な小都会の風景であった。適度に人も歩いていて、活気もある。この都市の規模ゆえ、鉄道も残してあるのだろうが、街にとって鉄道の重要度はあまり高くなさそうである。とにかく乗ってきた通り、沿線に人口の集積がなく、農村集落ばかりなので、平日であっても、ヌオロへの通勤通学需要も限られている気がする。マコメルから見れば下り列車であったが、実際にはここが最大都市である。土曜の夕方、さて戻る列車には、どのぐらい人が乗るだろうか。急いで駅前を観察した次の関心事はそれである。

 ヌオロ駅舎  ヌオロ駅前

 ヌオロ18時50分発マコメル行きは、行きと同じ車掌で、乗客は私の他、4名いた。オロテリで若い男性が下車、駅前に停まっていたバスに乗り継いでいた。そのバスも他に乗客はいなかったようで、ローカル交通の厳しさはいずこも同じである。

 オロテリは駅前からバスが接続  最後の1名がビロリで下車

 行きに列車交換のあったボロタナには、ヌオロ発ボロタナ行き最終列車が先に到着していた。こちらの列車も時刻表では1分停車なので、すぐ発車すると思ったのだが、一旦前進し、後退して、あちらの列車を後ろに連結してから発車した。そのためボロタナからは時刻表から5分遅れでの運転であった。この連結作業時間が毎日の作業なのに列車ダイヤに反映させていないのか、それとも日曜が全面運休なので土曜だけの措置なのか、良くわからない。

 行きと同様、交換設備のある駅では必ず車掌がホームに降りて、駅舎にある何かを操作している。恐らくポイントではなく信号関係であろう。途中からの乗車はなく、最後の1名は、マコメルの一つ手前のリクエスト・ストップ駅、ビロリで下車した。最後の一駅だけ、乗客が私だけとなり、夕闇迫るマコメルには20時12分、時刻表より6分遅れで到着した。


サッサリ~アルゲーロ Sassari - Alghero


 月曜日に、今回対象の最後の1線、サッサリからアルゲーロの30キロに乗るため、サッサリに戻ってきた。アルゲーロは内陸都市サッサリに一番近い海辺の街で、人口はヌオロよりやや多いサルデーニャ第5位、ビーチリゾートとしても栄えている。国際空港もアルゲーロにある。他2線と違い、観光客の利用も見込めそうな路線だ。

 だからサッサリとアルゲーロの間は、もっと頻繁に列車が走っていても良さそうなものだが、運転本数は少なく、運転時間帯にも妙な偏りがある。だから、意外と乗り潰しにくい。移動需要がないわけではなく、半分ぐらいはバスでの運行になっており、鉄道の時刻表に一緒に掲載されている。具体的に言うと、列車は朝に3往復、昼すぎに2往復、夕方に1往復で、他に朝にアルゲーロ側の区間列車が1往復ある。そして、鉄道の時刻表に一緒に載っているバスは、朝と昼の間の鉄道空白時間帯に3往復、昼から夜にかけて5往復ある。バスは途中、オルメド(Olmedo)のみ停車で、他の駅には停まらない、というか、寄らない。それでいて所要50分。他方の鉄道は途中7駅もあるのに40分なので、狭軌といえども、バスより速い。

 乗るのは12時45分発サッサリ発アルゲーロ行きで、終着アルゲーロで40分滞在してサッサリに戻る。この1本前は7時45分発で、その間にバスが3本出ている。それなら12時45分という昼の半端な時間もバスで良さそうなものだが、とにかく列車がある。仮に朝夕のみの運行なら、もっと乗り潰しスケジュールに苦労したであろう。

 発車は国鉄の本屋前1番線の三線軌条のホームである。切符売場はソルソ行きと同じ所に窓口と券売機があるので、今度は窓口で切符を買ってみた。自動券売機と違い、駅名が印刷されていない、金額だけの切符であった。運賃は3.10ユーロ(468円)。30キロの距離があるのでまあまあで、ソルソ線の10キロ1.90ユーロ、ヌオロ線の58キロ4.90ユーロと並べてみると、かなりの長距離逓減制であることがわかる。この切符はつまり、どこから乗っても良い3.10ユーロ区間の片道券であろう。その代わり、乗車駅で刻印を忘れてはならない。多分、バスにも使えると思う。

 アルゲーロ行きはサッサリ1番線から発車  サッサリからすぐのサンタ・マリア(復路に撮影)

 車輌はソルソ線と同じで、2輌1編成であった。乗客はパラパラとは乗っているが、ソルソ線よりは空いている。定刻に発車し、右手に国鉄の線路を見ながら、間にヤードの跡が現れるとすぐ停車し、最初の駅、サッサリ・サンタ・マリア(Sassari Santa Maria)に停まる。ソルソ線の最初の駅かつトラムの終点が、サッサリ・サンタ・マリア・ディ・ピサと、名前が似ていて紛らわしいが、場所も異なる全くの別駅である。ここでおばさんが一人乗ってきた。サッサリの市街地にも遠くないものの、駅に隣接してモダンなビルが一つある他は、殺風景な所だし、サッサリ本駅に近すぎて、利用者も限られていそうな駅に見える。

 国鉄オーバークロス地点・北方向  国鉄オーバークロス地点・南方向(復路に撮影)

 その先も、左手遠からぬ所は人家も多い筈なのに、車窓はあまり家並みも見えず、殺風景な所を走る。やがて田舎の景色になってしまった。そして、一旦は右手に分かれて消えた筈の国鉄標準軌の単線の線路が、右から近づいてきて、こちらが上を跨ぐ。

 国鉄のトンネル・サッサリ寄り  国鉄のトンネル・モラファ寄り

 そこから先は、国鉄の線路ともつれ合うように、並行して走る。こちらが大体、少し高い所を走るので、車窓左手には下を走る国鉄の線路が見え隠れする。逆に国鉄に乗っていると、この狭軌鉄道は、列車がいない限り、どこを走っているのかもわかりづらい。国鉄には短いトンネルもあるが、一段高い所を走るこちらには無い。

 寂しい所にあるモラファ駅  モラファ付近の寂しい風景

 そんな眺めを楽しんでいると、列車は減速し、次の駅、モラファ(Molafa)をゆっくり通過した。ここもリクエスト・ストップなのである。モラファは味のある駅舎がある古そうな駅だが、駅周辺は閑散としており、いかにも利用者は少なそうである。この駅のあたりには、国鉄の列車を上から撮影できる場所がありそうなので、この閑散とした寂しい駅の雰囲気を味わうのと兼ねて、降りてみると面白いかもしれない。もっともこの通り運転本数が少ないし、下を通る国鉄も同様に少ないので、撮影を兼ねて効率良く訪問するなら時刻表でしっかり下調べをする必要がある。

 モラファを過ぎるとほどなく、国鉄が左へ、こちらが右へ、それぞれお互いが背を向けるようにカーヴを描いて離れていく。そこから先も、沿線風景は寂しく、丘陵地や牧草地、荒れ地ばかりで、人家もたまにしか現れなかった。サン・ジョルジョ(San Giorgio)、アルコネ(Arcone)の2つの駅も、リクエストストップで、徐行通過した。駅周辺も何もない寂しい所であった。

 そんな風景が変わってくるのが、オルメドが近づいた辺りで、丘陵地の上に人家がまとまって見えてくる。そして平地となり、ポイントを渡り、交換駅のオルメドに停車。駅の両側に商店や人家が見られる、どこにでもありそうな風景だが、これまでの途中駅が軒並み寂しかったので、立派な町に見える。

 オルメドは下車客が多かった。また、ここから乗る人もいる。乗車は学生が多いようである。高校でもあるのだろうか。朝に一往復、こことアルゲーロの区間列車があるので、ここオルメドは、主要都市サッサリよりも、アルゲーロとの交流が深いのかもしれない。というより、アルゲーロの郊外住宅地と言える立地なのだろう。

 オルメド付近の風景  乗降とも多いオルメド駅

 オルメドでは列車行き違いのため4分停車する。時刻表ではこちらが13時10分着、14分発で、反対列車は13時11分着、13分発である。全線走るのは1日6往復だけの路線だから、全線一閉塞で1編成でも運営できないことはないが、朝の殆どと昼の2往復は、いずれもここで列車行き違いをするダイヤになっている。見ていると反対列車の方も、アルゲーロから乗ってここで降りる客が多いようであった。

 オルメド駅反対ホーム側の風景  反対ホームにアルゲーロ行きが到着

 オルメドからは平地となり、海が近づいた感じはするが、やはり沿線は人家も少なく、あと2つある途中駅も、リクエスト・ストップで停車せず、駅付近にまとまった人家も見られなかった。

 最後の途中駅プンタ・モロを通過  アルゲーロ手前の車窓

 最後の途中駅プンタ・モロ(Punta Moro)は、もうアルゲーロの郊外で、地図で見ると周辺に住宅や宿泊施設が点在しているのだが、荒れ果てた寂しい駅であった。


アルゲーロ Alghero


 アルゲーロには定刻13時15分に着いた。下車客は、オルメドとどちらが多いか、という程度ではあるが、キャリーバッグを転がした客がいるなど、ここは地元利用ではない客も乗り降りする駅である。ソルソ線もヌオロ線も、そういう光景は見かけず、軽装の地元客ばかりであった。

 アルゲーロ駅に到着  ホーム先端からサッサリ方向

 駅は相対ホームの他、駅舎側ホームのサッサリ寄りに切り欠きホームもあるので、3番線まであると言っていいし、ホームも長い。しかし使われているのは駅舎前の1線だけのようであった。他にもサッサリ側には錆びついた引き込み線が何本もあり、線路が半分草に隠れていた。かつては貨物でも扱っていたのだろうか、それなりに広い構内を有する。今も車輌の夜間留置はあるが、せいぜい4輌編成が止まれる線路2線ぐらいで賄えるであろう。車輌基地もソルソ線と共用のサッサリが機能しているようだし、要するにここはもう実質は簡素な盲腸線の終着駅なのである。

 アルゲーロ駅舎と駅前  サッサリ行きバス

 駅舎は格別の味わいはないが、あまり見かけない独特の四角い建物であった。駅前は広く、がらんとしており、車の停まっていない駐車場のようでもあった。無人のバスが一台おり、見るとサッサリ行きという行き先が出ていた。列車と同じ区間を走るバスであろう。乗ってみてわかったのは、この線の途中駅はほぼオルメドだけで、他は利用者が非常に少ない。だから、乗客の少ない時間帯は、オルメドのみに立ち寄るバスを走らせた方が効率が良いのだろう。


 駅だけを見れば活気はないが、アルゲーロ自体は寂しい所ではない。空港もビーチもある街である。そのビーチが徒歩5分ちょっとなので、行ってみる。

 アルゲーロ駅付近  ビーチ沿いの道路

 駅とビーチの間は、住宅街で、4~6階建て程度のアパートも多いが、高層ビルは無かった。恐らくある程度はセカンドハウスであろう。そうして着いたビーチは、白い砂が印象的で、海沿いもやはり高層の建物もなく、鄙びたビーチリゾートの感が強い。古そうなリゾートホテルもあり、パラパラとカフェやレストラン、バーなどがある。おそらく夏はもっと賑わうのだろうが、4月の平日の今日は、日光浴をしている人を点々と見かける程度で、長閑そのものであった。

 駅付近のビーチから市街地方向  駅付近のビーチから市街地と逆方向

 駅に近いこの辺りは静かで快適なビーチだが、アルゲーロの本当の市街地で港もある所は、ここから1.5キロほど南、海に向かって左側になる。残念ながら40分後の列車でサッサリに戻るため、そこまでは行けなかったが、駅近くのビーチから遠望すれば、それなりに建物などが集積しているのはわかる。それでも高層マンションで埋め尽くされたビーチリゾートとは違い、素朴さが温存されていて、好ましい。緯度が高いので冬の日が短く、天気の悪い所が多い欧州では、太陽の光がたっぷりある夏のビーチリゾートは、一つのトレンドで、海水浴目的とも違い、老若男女、ただビーチでのんびり日光浴、という感じで夏のホリデーを過ごす人が多い。個人的にはつまらないホリデーだなと思ってしまうが、太陽を欲する気持ちはわかる。欧州あちこちを旅していれば、嫌でもそういったビーチリゾートに巡り合う機会は多い。そんな中にあって、ここサルデーニャ島自体、まだまだマイナーで、アルゲーロも多分、欧州人にとって穴場リゾートであろう。三線三様の狭軌ローカル線は、異なる個性があり、どの線も面白かったが、その最後を明るく長閑なビーチで終えられたのは、それはそれで良しとしよう。

 サルデーニャ島の鉄道は、国鉄の標準軌路線も含め、驚くような絶景こそないが、どこも風景は変化に富んで個性も豊かだし、概して空いていて快適な旅ができる。治安も良く、物価も西欧では比較的安い。のんびり汽車旅派の方に、一度は訪問をお勧めしたい。



欧州ローカル列車の旅:サルデーニャ北部の狭軌鉄道 *完* 訪問日:2023年4月22日(土)~4月24日(月)


サルデーニャ北部の狭軌鉄道 (1) へ戻る    コブレンツ~トラベン・トラーバッハ へ進む